ハングル工房 綾瀬店 ホームへ
Mail to home master: Ken Mizuno
時代は現代。ヒロイン、10才の少女は、常にエリートの兄と比べられている。楽しみにしていた誕生日に、「あんたなんか生まなきゃよかった」と母親に言われて、声が出なくなる − 急性失語症 −。多少心配してくれた兄の示唆で、彼女は一人で田舎のじいちゃん・ばあちゃん − 少女の母親の両親 − のもとに行く。田舎には、死んだ伯母 (少女の母の姉)、兄、少女自身 ・・・ の生まれた日に植えたという木が、ある。が、少女の母親の木は、ない。彼女の生まれる前後に、その姉の手術が重なったからだという少女の母親の幼時の体験、それが現在の母親としてのあり方につながることを示唆しつつ、話は一見 極端に、少女の失語症ではじまっている。ジブリの 「トトロ」や 「千尋」と同じ 「絵本」構成になっているので、細部は省かれているようだが、原構成の上では、幼時の体験に起因して少女を うとみ続けてきた母親の内省などがあるはずで、ある日 「ママと呼んでくれるの?」 と、感動的な和解がやってくる。
その田舎で、少女は言葉を取り戻す。再び東京へ。少女は学校に復帰し、同じクラスでのいじめ事件、養護学校の少女との関係などの中で変化してゆく。その変化の余波で、エリートだった兄まで豹変し、少女はさらに母親にさえ挑戦してゆく − わたしがXXおばさんに似てるから、そんなに私がきらいなの? と。
きつねが森で、家のないひよこに会った。しめた、でも痩せてるな。連れて帰って、もう少し太らせてから食うことにしよう。「親切なきつねのおにいちゃん」と呼ばれて、きつねは「ぼうっとなった」。ある日、二人は森で、家のないうさぎに、さらにある日、家のないあひるに出会った。そのたびに 「親切なきつねのおにいちゃん」と呼ばれて、きつねはぼうっと なりつづけた。ある日、おおかみがやってきた。きつねはおおかみと戦い、追い返すと、翌日 死んだ。家のない3羽 (うさぎも 「1羽」ですな)は、親切なおにいちゃん、ありがとうと。これが、ミュージカルになっている。
「ハリー・ポッター」シリーズの展開は、どうもこんな風になっているか、あるいはさらに複雑なような気がする。ある「解決」の段階でさらに新しい 「伏線」が用意されると、構造は限りなく深く、複雑になってくる。第1の伏線 第2の伏線 第3の伏線 第3の解決 第2の解決 第1の解決 | | | | | | | | | (近距離の解決) | | | | | +----------------+ | | | +-----------------------------------------+ | +---------------------------------------------------------------------+ (長距離での解決)
なお、Hermione を Hermiony と表記した部分は、第1巻ではまだ発見できない。映画の字幕にも出ないので、おそらく彼女は原文文脈では最後まで Hermione、日本語版の訳書と字幕でだけ、一貫して 「ハーマイオニー」なのだと思われる。あるいは、アメリカ版の本には Hermiony が現われるか、そのあたりも、わたしは英語が 「専門」ではないので、今のところわからない。
巻 略称 種別 状況 1 賢者の石 原本 最初の箒飛行、シーカーへの抜擢まで読んだ 1 賢者の石 訳本 ななめ読みした (できた) 1 賢者の石 映画 いやになるほど見た 2 秘密の部屋 原本 まだ 2 秘密の部屋 訳本 読んだ 2 秘密の部屋 映画 半年くらい先に見る見込み 3 囚人 原本 まだ 3 囚人 訳本 読んだ 3 囚人 映画 まだ、存在しない 4 ゴブレット 原本 まだ 4 ゴブレット 訳本 まだ買ってない 4 ゴブレット 映画 まだ、存在しない
At the start-of-term banquet, Harry had got the idea that Professor Snape disliked him. By the end of the first Potions lesson, he knew he'd been wrong. Snape didn't dislike Harry - he hated him. ("Philosopher", paperback p.101)問題は、Snape didn't dislike Harry - he hated him という1文にある。その前には、he knew he'd been wrong ともくる。これも、実はネイティブ読者は にやにやするか、大笑いするか。これは子ども向けの作品であることを忘れてはいけない。中学のころ習った・その程度の英語が、なぜこんなに 「新鮮に」感じられるのだろう? 「ああ、俺はまちがってたんだ。やつは俺が嫌いなのではない、俺を憎んでたのだ」。ただ、それだけなのに。
学期の初めの宴のとき、ハリーは、教授のスネイプが自分を嫌っているのだと思っていた。だが最初の魔法薬の授業が終わってみると、ハリーは自分の考えが誤っていることに気がついた。スネープはハリーを 「嫌って」いるのではない。「憎んで」いるのだ(った)。
She didn't marry to him because he was rich.次は 「時蝿(トキバエという名前の昆虫)(たち)は(一般に) ある種の矢が好きだ」と読める:
Time flies like an allow.次の日本語は、「良い」と言っているのですか、「良くない」と言っているのですか?
ねえ、これ、いいじゃない。慣れない言語に接するときは、その意味 − それも実際の運用の中での意味 − がわかりはじめると、面白くなる。だから、学生だったとき、僕には朝鮮語の本が面白かったんですね。
言っとくけどね、今年は七五三、やるからね。時期が悪いぜ、お前ちゃん。お父さん おカネがなくて、借金して生活費を工面しているのに。でも、お前ちゃんの言う通り、これが最後のチャンスだ。これを逃せば、機会は一生やってこない。しかし − いったいこれは 「何の」、どんな行事なのだろうか。
この作品、結局 原作では、ぼさぼさ頭のハリー、ひょろひょろのロン、出っ歯でブスのハーマイオン日本語の厳密な意味において、「出っ歯」というのには、英文マニュアルの翻訳を職業とする元同僚から異議が出た。彼女は、原文も訳文もみんな見たという。
She had a bossy sort of voice, lots of bushy brown hair and rather large front teeth. (p.79、太字化は水野)重要なことは、この 「原文」は、朗読されるとアメリカ人はげらげら (またはけらけら)笑い出すような文章であること、bossy, bushy という語の繰り出しがある種の 「韻」を踏んでいること、この2語がまた決して 「上品な」単語ではなくて、子どもの喜びそうな表現であること、それに続いて問題の rather large front teeth という表現が出て、ついに彼らは笑い出したこと − である。要するに作者は、子供向けの文章、仮に大人が読めば面白がるような文章を綴っている、ということ。謹厳実直、マルクス主義原典を学問的に解釈するために苦虫かみつぶした表情で読むような、そういう文章ではない、ということだ。
なんだかえらそうな声でしゃべる、もじゃもじゃと長い茶色い髪の、やたらに前歯のでかい女の子だった。「韻を踏む」のを訳すのは基本的に無理で、不可能なことを試みてもしょうがない。原文では rather、一見控えめな表現は、しかし実際には 「過激な表現」に先立って出る緩衝表現だと見ることにする; すると、これは 「やたらに」 と訳す根拠にもなる − このあたりは、「翻訳」原論的な議論で、議論を展開すればキリがないのだが。
(原文) 'Has anyone seen a toad? Neville's lost one,' she said. She had a bossy sort of voice, lots of bushy brown hair and rather large front teeth. (p.79)訳本が 「読みやすさ」を求めて 「。」 を挿入している点、これは僕も悪くないと思う。
(水野) 「誰か、ネビルのヒキガエル見てない? いなくなったやつ」 と彼女は言った。なんだかえらそうな声の、ふさふさした茶色の髪の、前歯が妙に大きな女の子だった。
(訳本) 「誰(だれ)かヒキガエルを見なかった? ネビルのがいなくなったの」
なんとなく威張(いば)った話し方をする女の子だ。栗色(くりいろ)の髪(かみ)がフサフサして、前歯(まえば)がちょっと大きかった。 (p.157、カッコ内は訳本ルビ、改行も訳本による)
'Yer not from a Muggle family. If he'd known who yeh were - he's grown up knowin' yer name if his parents are wizardin' folk - you saw 'em in the Leaky Cauldron. Anyway, what does he know about it, some o' the best I ever saw were the only ones with magic in 'em in a long line o' Muggles - look at yer mum! Look what she had fer a sister!' (p.61)訳本に導かれて、僕はそう解釈した。でも、訳本のハグリッドの言葉の、やさしいこと。
"You are not from a Muggle family. If he had known who you were - he was grown up knowing your name if his parents are wizarding folk - you saw them in the Leaky Cauldron. Anyway, what does he know about it? Some of the best (Wizards or Witches) I ever saw were the only ones with magic in them in a long line of Muggles - look at your mum! Look what she had for a sister!"
「お前はマグルの出じゃないぜ。お前の正体をそいつ(訳注:マルフォイ)が知ってりゃ、どうだったか。親が魔法族だっちゅうなら、そいつはお前の名前をいつも聞かされて育ったはずだな。「漏れ鍋」で会っただろう、そういう連中に。どっちにしても、そいつに何がわかる? 俺が会ったことのある最高の魔法使いには、長い間マグルばかりだった家系に、たった一人だけ魔法の使えるのが生まれたってのが何人もいる。お前の母さんがそうだ。その母さんの姉貴なんか、見てみろ、あのざまだ」
(対照される方は、訳本では p.121 に該当部分)
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音声: English (5.1ch) / Mandarin, Korean, Cantonese (2ch)言語表示の順や、音声の数と字幕の数の不一致は、これは日本で売っている DVDにも見られる現象なので、まあ、よいことにする。
字幕: English, Cantonese, Mandarin, Korean, Thai
The snake suddenly opened its beady eyes. Slowly, very slowly, it raised its head until its eyes were on a level with Harry's.小説の話法としては、やはり古典的な舞台回し型 (書き手の視点が、映画カメラのように自在に移動する 「絵本」型: 訳本を読んだ方はご存知の通り)。かつ、英文自体は純然たるネイティブ・スピーカーのもので、時制など いわゆる 「歴史的現在」、つまり過去形と大過去(過去完了)の関係など、なんだか受験英語の参考書を思い出してしまった。
(ヘビは突然、ビーズみたいな目を開けた。ゆっくり、ゆっくりと頭を上げてきて、ハリーと視線が合った)
Paper Back Philosopher p.25
(*) それでも僕は、まだこの訳本に不満がある。訳本をお持ちの方は、上の引用の僕の訳と、訳本の p.44 を比べていただきたい。訳本の 「かま首をもたげ」 なんて表現は 「訳しすぎ」だ。もっとも、「ハリーと視線が合った」とも原文には書いてない。訳本は、その点は忠実な訳文である、が、原文の簡潔さは やや犠牲になっている。
まったく同じ問題が、韓国の作品の訳にもある。だから、原文のない訳文だけの作品を読むのは気が重い。原文が僕には読めないならあきらめもつくが、読める、入手する回路もある、となれば、「元」研究者、別の言い方では 「研究者崩れ」の僕としては、原文を参照しないわけにいかないことになる − 因果な立場だと、自分でも思うのだが。
「ハリー・ポッター」の原題が Sorcerer になっている点、興味半分で店員に聞いてみたが、Philosopherと書いたパッケージは店にない; 店員は Same story と答えて、すました顔である。ふむ。ソフトを見てみると、少なくとも画像(動画)は 日本で売っているのとまったく同じみたいだ。「千と千尋」は、まだ見ていない。
Harry Potter and the Sorcerer's Stone 音声:英語、中国語、広東語 字幕:英語、中国語、インドネシア語 千與千尋 / 千と千尋の神隠し / Spirited Away 音声:日本語、広東語 字幕:英語、中国語、日本語
言っとくけどね、行くだけで1日、帰るだけで1日かかるんだからね!うん。とーちゃんも、それはわかってるよ。だから、学校の先生には 「月曜 お休みします」って、お手紙書いたじゃないか。
それより有名な 「白雪姫」はどうであろうか? 同じグリム童話では、真冬に咲く愛らしい小さな花、「ゆきのはな」という別名で、再び白雪姫が登場する。「真冬のことでした。牡丹雪(ぼたんゆき)が降っていました。女王が窓辺に坐って仕事をしていました。窓枠は黒檀(こくたん)でできていました。外の雪に見とれて指を刺してしまい、血が三滴、雪の上に滴(したた)り落ちました」というのが書き出しである。(・・・)原文の引用にすぎないが、引用にしても 「見事な引き方」ではないか。ここまで読んで、読者は気がつく: 白雪の 「雪のように白い肌」、「血のような赤い唇」、そして 「黒檀のような黒い髪」。そして、継母の鏡は、あなたより美しい人は 「白雪姫です」と言ったのではなくて、「ゆきのはな Snow White です」だと言ったわけである。
(ピーター・ミルワード、小泉博一訳、『童話の国イギリス / マザー・グースからハリー・ポッターまで』、中公新書 1610、p.32)
(・・・)しかし、私は、これらの童話集の作者に興味があったわけではなく、童話そのものの魅力に心惹(ひ)かれていたと思う。日本の児童文学研究家は、どうも著者の名前にこだわるようだが、子どもたちはそのような些細(ささい)なことには関心を示さない。人に読んでもらおうと、自分で読もうと、童話はそこに存在しているのである。それだけで十分なのだ。コナン・ドイルがシャーロック・ホームズに、ベアトリックス・ポッターがピーター・ラビットに、そして、最近では J.K.ローリングがハリー・ポッターに席を譲(ゆず)ったように、著者が後部座席を占めることくらいは許してもよかろう。そして、そうあるべきだと思う。ほらほら、やはり ハリーは ピーター・ラビットの落とし子なのだ。そして同時に、ブルームズベリー周辺の 「夢」であったダイアナの落とし子であるかも、しれない。
(同書、pp.35-36)
ダーリン夫妻とウェンディ、ジョン、マイケルという三人の子どもたち、それに、子守犬のニューファンドランド・ナナが登場する。そこにピーターが入り込んできて、窓から子どもたちを誘い出して南の海の魅惑の島の干潟(ひがた)まで飛んでゆく。そこは、迷子の男の子、人魚、インディアン、それにフック船長率いる海賊たちが集(つど)うネヴァーランドの国でもある。もちろん、そこを訪れた子どもたちは、まんまと海賊たちとフック船長をワニの餌食にして、無事に家に戻ることができるのだが、ピーターは、無人島に住む子どもの永遠不滅の世界への愛着ゆえに、その子どもたちと行動をともにすることができない。ピーターは、「ぼくは、いつまでも子どものままでいたいのだ。そして楽しみたいのだよ」 と言って、子どものままの状態に留(とど)まって、決して大人にはなろうとしない。この先の著者の説明が、おもしろい。著者は、このピーターパンの考え方に首をかしげたという。子どもなら、一刻も早く大人になりたいと思うものだし、私自身そうだったと。ところが、数ページにわたってそのおしゃべりを続けたあげく、私はピーターパンの海賊船に乗って日本に来た、そこで出会ったのはいつも若い学生たちで、学生たちはいつも同じ年代だから、私もトシを取るのを忘れ、いつの間にか子どものまま年寄りになってしまったのだと − この言い方も、大学教官が一般に 「やたらに若く」見える現象を説明しているようで、「言い得て妙」 だった。
(ピーター・ミルワード、小泉博一訳 『童話の国イギリス / マザー・グースからハリー・ポッターまで』、中公新書 1610、pp.230-231)
Harry Potter and the Sourcerer's Stoneよく見ると、上のはアメリカの出版、下のがイギリス:ブルームズベリー自身の出版らしい。アメリカ版のペーパーバックが安いが、こういう言い換えを平気でするというのは、ちょっと首をひねった。作者自身は承知したのだろうか。もちろん、同じ作家の名前が書いてあるし、同じシリーズで 「類似品」が出せるわけもない。表紙の絵も、同じらしい。アメリカ版ペーパーバックで、既刊4冊セットが2千円台、イギリス版ペーパーバックは4冊あわせると4千円台、オリジナルと思われるハードカバー4冊セットが6千円台。結局、まんなかのを注文した。
Harry Potter and the Philosopher's Stone
・『指輪物語』の作者は、「ハリー・ポッター」への受賞を決める審査員側である最後の項目で、彼も4児の父親、大笑いした。
・ピーター・ラビットだったかの挿絵を描いている 「ベアトリックス・ポッター」という作家(画家?)がいる
・ダイアナ妃の遺児の名前は ハリー(ヘンリー)
・「さりげなく」、物語の 「主人公とヒロイン」は ロンとハーマイオンであると書いてあること
・プリベット通りは実在し、じいさんの実家とはちがう 「典型的な」イギリスの街だそうだ
・ハリー原書の出版社名 ブルームズベリーとは地名で、これはピーターパンのウェンディたちの家のあるところだ
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