Ken Mizunoのタバコのけむり?

Hangeul-Lab Ayase, Tokyo
Ken Mizuno

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Mail to home master: Ken Mizuno


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この時期の前後の 目次


(20040616-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (14) − 補足 (2): 通信の秘密と暗号化

通信を盗み見される点は
どこにあるか
図は、外国に出て (6) コロンブスの卵的にメール送受信をする − つまり現地のプロバイダと契約はするがそこのメール・サーバは使わず、日本にいたときのままの メール設定で、日本側のメール・サーバにつなぐとき の ものである。

赤線は パスワードが通る 受信 つまり POP の、データ受信経路。この赤い矢印は 「データ」 の転送方向を示しただけなので、実はこの逆方向にも 自分自身のメール名、それにパスワードが、特に手段を施さない限り 「平文」 で転送される。もちろん サーバ名は転送経路そのものに関わるから、これも平文で送信される。この経路は長い。外国からのアクセスだから、地球を1回り半してサーバに到達するかもしれない。その結果として、おおむね逆の経路で受信メール本文が送られてくる; ただし 「インターネット」 の転送経路の性格上、その経路がいつも同じとは限らない。ある時はフィンランドからをロシアを経由するかもしれないし、あるときはアメリカ周りになるかもしれない。要求した返信が、まったく異なる経路で届くこともある。だから、絵は 「雲」 のつもりなのだが、(3) の位置、つまり 「インターネット転送経路」 の途中で、目標を捕捉しそれを盗聴しようなどというのは、まさに 「雲をつかむような」 話で、これは心配のネタから排除してよろしい。

(4) の位置での盗聴は、直前の記事で書いた。これはクレジット・カード番号の盗用と同じで、普通人が普通に注意を払って、避けられるものでもない。従って これも心配するだけムダである。

問題は (1) と (2) の位置、つまりプロバイダ and/or メール・サーバの出入り口。問題の1つは、そこにはいつでも官憲・公安の査察がある可能性があることで、これにはプロバイダも喜んで(?) 情報提供するだろう。それも、これは 「盗聴」 ではなく、「私」 に関する情報が整理された姿で官憲に提供されてしまうのだから、救いはない。これを避ける方法は、原則的には、ない。
ただし、送受信者間での 「暗号化メール」 という方法を取れば どこのプロバイダもそれを 自力で解読することはできないので、たとえ官憲の要求があっても、「私」 の通信記録は暗号化されたまま渡すしかない。この場合 「私」 のパスワードそれ自体が、左のメール・サーバ上でどうなるのか、そこのところが 僕もまだよくわからないのだが − しかし、個人間のメールの暗号化は、送受信 双方で相当な準備をする必要がある。その程度の知識と準備のある人は、それを自力で解決するはずである。
(余談だが、現代の暗号は、昔の 「乱数表」 などとはまったく異なる。ごく単純な (乱数表の末裔の) 「共通キー」 による暗号化でも、「64ビット・キー」 で解読には数年かかる。が、コンピュータの能力が倍々ゲームで上がって行くので、キーの長さも倍々になるが、しかし キーの長さ1ビットで倍の時間がかかると見ていい。従って現代の 「共通キー」 単純暗号化 「128ビット・キー」 では解読に天文学的な時間を要し、現実的に解読不能になる。
次の SSL では、さらに サイト側 「秘密キー」 と パソコン側 「公開キー」 で互いに認証しあい、その暗号で 「共通キー」 を交換、その 「共通キー」 で実際の通信をする。Webメール SSL の上では、これらは自動的に動くので、この暗号化・復号の手順を意識する必要はない。が、「いつ、どこから どこまでが」 暗号化されているのかは、意識しておく必要がある。これは、Webメールの場合、ブラウザの欄外に 「カギ」 マークが出ているかどうかでわかる)
SSL による − つまり Webメールのときの − パスワードの暗号化はどうなるか。
この場合、ブラウザの Webメール画面上で SSL つまりパスワードが暗号化されていれば、少なくとも (2) 現地のプロバイダの上では 「私」 のパスワードは解読できない。それを解読する (暗号化されたものを復号化する) のは、図には描いてないが 左側 Webサーバの CGI である。ここで解読されたパスワードが、その構内のメール・サーバに届けられる。このパスワード暗号化の地点は下端、「私のパソコン」 であり、解読地点は左のサーバ直前にある CGI。従って その中間地点のどこで盗聴されても、「盗聴」 した意味がない。これで、パスワードという秘密は保持できる。ただし − くどいようだが、その秘密通信はパスワードだけの話で、この認証が終わると Webメールの画面本体は平文にもどってしまう。厳密な意味での 「通信の秘密」 はない。(1), (2) で官憲の要求がある場合、あるいは特に 「私」 をねらったハッキングに出会う場合には、私の通信内容は露呈してしまう。しかしこれは、何も国際間メールの話ではなく、国内同士の Webメールでも同じことである。

ハッキング。
一般には、これが一番 心配だろう。例えば (1) の位置、つまり 「私」 自身のメール・サーバに、外部からの侵入があった場合。ここには、「私」 に限らず、このサーバの顧客全員のパスワードがある。もちろん、内部的には厳重な警戒・管理があると信じたいが、中にはいい加減なところもあるだろうし、パスワード自身が 「すぐ想像できてしまう」 客もいる。管理者のパスワードがそんなものであれば、あっという間。それを足場に無数のメール・アドレスとそのパスワードが入手できる。ハッカーには有用かつ価値ある情報 (カネになりそうだし) である。

ハッキングについては、この図の場合、(2) 現地側プロバイダへのハッキングは、「私」 には あまり意味がない。「私」 のメール・パスワードは 現地のプロバイダ構内には登録されていないから、あえて調べるなら、上の 「官憲に要求されたとき」 プロバイダが整理・提供するだろう 「私」 の通信記録を探し出し、その中に 平文の (左端メール・サーバへの)パスワードを発見できるかどうか; この作業は相当に面倒なはずである。あるいは、「今この瞬間 この電線上を流れている信号」 をソフトウェアで読み出し その中から 「私」 に関するものを拾い出すことができないではないが、これもプロバイダ内部に (物理的に) 入り込まないと難しいし、その瞬間に 「私」 が通信している保証もない。ある期間にわたって自動的にそれを収集することはできるだろうが、それはハッキング自体の発覚の可能性を高めることになる。従って この図の場合では、外国現地で、特に変質的・偏執的な異常性格を持つ技術者にでも ねらわれない限り、「私」 の情報が取り出されるおそれは多くない。

つまり (6) コロンブスの卵 方式は、「パスワードが平文で流れる」 という 「一見 致命的な危険」 を抱えてはいるものの、しかし その現実的な危険度は高くない。唯一、公安・官憲 関係者またはプロバイダ関係者の中に偏執的・偏執的な者がいて、その者に 「私」 がねらわれたら、困ったことになる。その場合は − Web メールに切り替えることだ。Webメールでログイン画面が SSL つまり暗号化されてしまえば、もう現地の他人には使えない。たとえ覗き見されることがあっても、Webメールの上でパスワードを変更してしまえば、一応の安全は守れることになる。

(この連載、一応終わり)

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(20040613-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (13) − 補足 (1): 通信の秘密と暗号化

この話題の前に、いくつか例え話におつきあい願いたい:
・裁判所の 「公判」 という言葉は 「公開された裁判」 のことで、どんな凶悪犯の裁判、被害者の微妙なプライバシーを含む裁判であっても、一般に裁判は 「公開」 されている。どこの誰でも、法廷に勝手に行って、勝手に傍聴することができる。原告、被告いずれかのプライバシーを第3者の傍聴から守る必要がある場合は、裁判官は 法廷を 「秘密」 に指定する; つまり傍聴者を入れないで裁判を行なうことは、できる。これで秘密が漏れた場合は、「非公開」 の内容を知っている裁判関係者、通訳、廷吏、速記者、あるいは裁判所内から漏れた、ことになる。

・紙の郵便物における 「通信の秘密」 は、郵便事業者内部のモラルによってのみ守られることができる。たかが紙で封印しても、そんなものは簡単に破ってしまえる。現金封筒をいくら厳重に封印しても、封筒ごと盗られればそれまでのこと。ハガキに至っては 文面が露出しているので、郵便配達さんの目を楽しませることこそあれ、これに 「秘密」 などあり得ない。まして、最近 役所が好んで使う、「はがして読めるハガキ」、あんなものでプライバシーが守られるわけがないではないか。いずれにしても、どんなに封印しても、紙の郵便物は 「紙」 が破られ、あるいは紛失すれば それでおしまい。事業者内部での 単にモラルが 「通信の秘密」 を − 原則的に − 「保証」 するだけである。
インターネット上の通信は、特に手段を講じないかぎり、原則として すべて 「平文 (ひらぶん)」 である。インターネット上の通信は、一般に誰でも 「覗き見る」 ことができる − もし、覗き見る手段さえあれば。これはインターネットに限った話ではなく、銀行の専用線オンライン (キャッシュ・カード端末) でも同じことで、かつて キャッシュ・カードや クレジット・カードの番号を 「盗み盗る」 事件は、まず関係する回線業者の、現場の担当者が犯人だった。つまり、客が入力した暗証番号やカードの番号を、その専用回線の工事関係者として従事する者が 「盗聴」 した。そしてその番号のカードと暗証番号を使ってカネを引き出したら、ドロン。

回線業者でなくても、キャッシュ・カードや クレジット・カードの磁気テープ部分を読み取る装置など、数千円も出せば手に入る。その程度の 「マイコン」 技術のある者なら、簡単に同じカードは作れる。それはフロッピー・ディスクのコピーと同じだ。このカードの磁気部分には、今でも 80桁の数字が書かれているだけである。かつては、その中に暗証番号まで書かれていたそうだ。その時代には、カード1枚 読み取れば、あっという間に偽造、カネは引き出されてしまった。さすがに銀行もそんな事件があってから、カード上には暗証番号を書かなくなった。暗証番号は専用線の先の中央大型コンピュータに記憶され、オンラインのその場での入力と対照される。言い換えると、暗証番号つまりパスワードが 長い長い専用線の上を流れる。これが まだ暗号化されていない段階で (たとえば、キャッシュ機と店舗のコンピュータの間では まだ平文である場合は、ありうる) 「業者」 がメンテナンスの機会にそれを盗聴することはできる、かもしれない (いや、今ならもう、キャッシュ機を出た瞬間に既に暗号化されているはずだが、僕が設計しているわけではないので保証はできないが。ただ、一般論として、キャッシュ機を出た時点で暗号化されていないのは、今ではあってはならないことだ)。だから今では、問題は暗証番号で、カードの偽造や窃盗の後、たった4桁の数字では心もとない。だから最近は、持ち主の生年月日など 「容易に想像できる」 番号は避けましょう、ということになる。(もっとも、最近の事件では強盗が押し入り、カードを取り上げ 被害者をネジあげて、暗証番号を聞き出した例がある。強盗はご丁寧に二人組で、一人が被害者を監視し、一人が銀行端末に走る; 犯人同士は携帯で連絡を取り合い、その暗証番号がウソなら被害者をさらに しばきあげる)

余談がすぎた。
インターネット上に流れる情報は、特に手段を施さない限り、原則すべて 「平文」 である。その中でも電子メールなどは歴史が古いので、「送信」 SMTP プロトコルでは パスワードさえ要求されない。これはかつて、電子メールの使えるような世界では中規模の 「ミニコン」 が使われ、ユーザは既にパスワードを持って 「その機械」 に 「ログイン」 していたから、改めてパスワードを入力する必要がないと考えられたからである。「インターネット」 やメールに限らず、通信は 「善意」 によって運営される前提だった。

ご参考までに、有名な 『カッコウはコンピュータに卵を産む』 というノンフィクション作品があった。これは、ハッカーを追跡し発見・検挙に至るまでの話だが、その時代は、「その機械にログインする」 ためのユーザ名とパスワード探しが、ハッカーたちの仕事だった。一度それが発見されると、あとは やり放題。パスワードは一応 暗号化されてコンピュータに記憶されているが、暗号化された結果は 平 (ひら) ユーザにも見えた。また、暗号化の手順は決まったものだったから、「ある単語 (パスワード) を暗号化した結果」 はいつも同じだった。だから 「世の中にあるあらゆる単語」 の辞書を用意し、それを片端から同じ手順で暗号化してみる; その結果がシステム管理者のパスワードの 「暗号化された姿」 と一致すれば、パスワードは破られた。「ギリシャ神話のどこそこに出て来る4足双頭の怪物の名前が俺のパスワードだなんて、どうして想像できたのだろう」という疑問は、これで解ける。「辞書」 に存在する単語を片端から暗号化していけば、いずれ 「暗号化ずみ」 の文字列と一致する (だから今でも、「辞書にある単語をパスワードにしてはいけない」)。こうして 当時のハッカー (厳密には Cracker とも言う) たちは 次々と 「腰の甘い」 サイトを経由して、最後には USA の軍事機関に侵入していった。それをあえて 「泳がせ」、ハッキングの元を追跡したのが 『カッコウは・・・』 の話の内容だった。

この事情は、現代でもそれほど変らない。ただ、今では 「暗号化されたパスワードが 平ユーザにも見える」 ことはなくなった。が、それでも、システム管理者が安易なパスワードを使っていると、サイトはたちまち破られる。予備校の Web ページがエロ写真に差し替えられたり、通産省のサイトが 「尖閣列島は中国の領土だ」 などと書き換えられるのは、単に ぶざまとしか言いようがない。

さて、「送信」 SMTP にパスワードは要求されない。これが現代の大量の 「発信者名 偽装 ウィルス・メール」 の温床になっている (今日も 僕を発信者と語る ウィルス・メールが数通、「宛先不明」 で僕に 「返ってきた」。出していないメールが 「返ってくる」 際、ウィルスごと 「返って」 くることがある。その場合、こちらのプロバイダのウィルス・チェックでも検出される。その警告メールまで含めて、だいたい1日に 30通?くらいの 「ウィルス」 に僕はつきあわされる。我ながらご苦労なことだと思う)。

それではいけないと 考えられたのが、「受信」 POP だった。ここでは、自分の名前とパスワードを、メール・サーバに送る必要がある。これによって、メール・サーバ側は 「正しいユーザ、正しい会員、正しい受信者」 を確認できる。最近 Send after Read (SMTP after POP) が主流になってきたのは、そのせいである − つまり、「メール送信したければ、まず名前とパスワードを出して うちの 客であることを証明せよ。そのまま切らず、送信せよ。いきなり送信はさせないぞ」 。
この方針は、正しい。ただし、それでもまだ、「受信」 POP プロトコルのパスワードが暗号化されているわけではない。まず、次の図を見ていただこう:

通信を除き見される点
国内でプロバイダに直結の場合
この図は、地元の 「私」 が、地元のプロバイダのメール・サーバにつないでいる場合。楕円の横に (4) と番号を付けたのは、次の図の (4) と一致させたからである。
この図で、実は (4) の部分は 「インターネット」 ではない; 「私」 と プロバイダとの間の 「私的」 専用回線と考えてよい。これは 電話でダイヤル・アップするのであれ、ADSL や 「光」 でつなぐのであれ、プロバイダに届くまでの間は 「インターネット」 ではなく、「私」 とプロバイダとの間の 「私的」 通信にすぎないという意味である。私的な通信、私的な回線なので、これは 「専用回線」 と考えてよい。ただし 「専用回線」 なら 「盗聴」 のおそれはないかというと、ある。この位置に盗聴装置を置かれたら、特に 「暗号化」 の処置をしていない限り、すべて他人に筒抜けである。例えば、マンションの場合、電話と ADSL なら1階のどこかに各戸への分配配電箱が、「光」 ならおそらく屋上に 「光 -> 電気」 の変換配電箱がある。ここに 「私」 をねらった盗聴装置を置かれると、「私」 の私信はすべて盗聴者に筒抜けになる。ただし一般人にはこれは難しい。盗聴装置を設置するには、「業者」 に扮するのが適当な方法である。ふだん 人の出入りしない、開けないドアや箱を開けて設置するわけだから、やはり 「業者」 として白昼堂々と設置するのが現実的である。

もっとも、「私」 は、そうまでして 「盗聴」 の対象となる人物であろうか? 前世紀の 007 ならともかく、こんな 「盗聴」 手段が いまどき現実的だとも思われない。
この位置で 「盗聴」するなら、むしろ この電線 (光ケーブル) の反対端、つまり業者側、つまり電線や光ケーブルが1ヶ所に集まる電話局内や、独立通信業者ならケーブルの集合点 (ビル) の構内に入り込むのが 効率的だろう。
どちらにしても、この種の 「盗聴」 は、「業者」 に扮するか、あるいは本当に業者内部に入り込むか、どちらかである。かつてのクレジット・カードの端末情報の盗聴と同じで、物理的な盗聴行為に まず打つ手はない。これに神経質になるなら、自警団でも組織することである。

ただ、犯罪が関連する場合、官憲の要求でプロバイダは 「私」 に関する通信情報を提供するかもしれない。この場合は、「私」 との通信経路より、プロバイダ側サーバの上に残る情報が使われる。これは、図の メール・サーバの中の情報、特にサーバの上側 つまりインターネットとの情報交換歴が官憲に渡されることになるだろう。この場合は 「盗聴」 というより情報提供であって、これに 「当方」 は抵抗しがたい。僕も正確な記憶はないが、日本の場合、プロバイダは たしか3ヶ月くらいの間、顧客全員について 「すべての」 交信を記録、保存し、官憲の要求によってそれを提出しなければならないはずである。
日本の場合、これも記憶が確かではないが、裁判所の令状が必要だったと思う。が、国によっては 「公安」 機関からの要求で、これは随時 検閲される可能性は ある。事実 USA 国内で問題になるのは、たとえ暗号化された電文でも、公安は絵の サーバの上側のトラフィックを常に監視し 解読しているのではないか、公安はその目的でこそ 通信暗号化の音頭を取って、実は ひそかに 「その暗号化手段の もう1つの暗号解読経路 (アルゴリズム)」 を持っているのではないかと、言われたことがある。

このあたりから、話は、図の サーバの 「上側」 に移動する。

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(20040611-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (12) − まとめ 3、プロバイダ自身の 「Web メール」

プロバイダ自身による
Web メールの例
この図は、僕自身の契約先である www.att.ne.jp の会員案内ページ (ここまでは第3者も見ることができる) の、一角。ここに見えているのは、www.hotmail.com に類似した 「Web メール」 のログイン窓である。ただし hotmail との大きなちがいは、この 「Web メール」 は、無料ではない。日本の法人プロバイダ AT&T (商標なのらしいが、Jens SpinNet とか称することがある) と契約し、そこで提供しているメール・アドレスを使っている (AT&T のメール・サーバを使っている) 人にだけ、この 「Web メール」 は使うことができる。ただ、この Webメール サービスを使うこと自体には、追加課金はない。「会員なら」 無料で使える。

その他は hotmail と同様、ログイン画面だけは SSL による認証、暗号化が行なわれている (つまり、ログイン時点でパスワードを盗まれるおそれがない)。ただし一度ログインしてしまうと、あとは平文のメール画面になる。もともと 「メール」 は通常 平文で、メール本体の暗号化・それに必要な認証の類を使う人はめったにいない − つまり 「電子メールにおける通信の秘密」 は、郵便物が途中で紛失したり覗かれたり検閲されたりする程度の 「危険」 にはさらされているので、それがいやなら使わないという方法しか残っていない。

が、その話題 (特にパスワードの秘密維持問題)は、次の記事にまわす。
まず、「プロバイダに届いたメールそれ自身が、プロバイダの開いている公開ページから読める、またそこから発信できる」 点に注目されたい。この AT&T というプロバイダは 特に 「先進的」 なところではない。他社との競争もあるので、他社がはじめた ウィルス・チェック サービスを ここも はじめた。同様に 他社のサービスに存在する 「当プロバイダ会員あてのメールを、Web メールとして会員に読ませる、また発信させる」 サービスも はじめた。
言い換えると、他のプロバイダにも、しばしば 同じようなサービスがあるはずである。

これを使う利点は、外出して自分の機械が使えないとき、普通にブラウザさえ使わせてもらうことができれば − 外出先の他人の機械でも、インターネット・カフェでも − 自分あてのメールをチェックし、必要なら返信もできることである。この場合、その機械 (のブラウザ) が 「私」 のログイン名はともかく、パスワードまで記憶してしまうことがあるので注意しなさい、という点も、hotmail とまったく同じである。ただ、これを使えば、「現在の」 メールの他に hotmail に登録し、個人情報を提供した上で 現在のメールとの相互の転送などを考える必要がない点、わずかに有利ではある。
ここで読んだメールは、特に 「削除」 操作をしない限り、プロバイダ上のメール・サーバに残る。従って 家に帰ってメール受信をすれば、それらはすべて手元に保存できる。

Web メールの常で、ブラウザの上で 「文字化け」 に出会うことがある。また、空白を並べて整形してある受信メールが、すっかり (並び方が) がたがたになって見えることがあるなど、Web つまりブラウザ経由で読む場合に 避けられない問題は、ある。

が、「パスワードの漏洩」 に神経質であれば、外出時 (あるいは外国に出たとき) あえて 「自分の機械で、自分のプロバイダの」 Webメールを選択するという方法はある。ここまでの説明で 「結論」 としたはずの 「コロンブスの卵」 を避けて 「あえて Webメール」 (hotmail であれ、自分のプロバイダの 「会員用」 のそれであれ) を選択すると、どうちがうか。それを再度、次の記事で説明したい。つまり次回は、「通信の秘密はどの程度に維持できるか」 という話題になる。

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(20040608-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (11) − まとめ 2、Webメールの文字化け

hotmail.com のサーバは
フィンランドにあるらしいが ・・・
Microsoftの 無料 Web メール・サービス www.hotmail.com につなぎ、自分の名前でログ・インした直後に出る画面。その左上だけを切り出したのが この図である (僕自身のメール名は、ここでは白く塗りつぶした。私的な目的でしか使わないことにしているので あしからず)。
この範囲内にも、数ヶ所の文字化けが見えている。ブラウザの設定で 「言語」 は 「自動判別」 にしてあるが、判別不能の場合にはデフォルトで 「この」 環境、つまり 「このブラウザを動かしている環境」 に落ちるらしく、結果として8ビット文字の一部が 「漢字」 にバケている。この自動判別は事実上不可能で、ISO-8859 各 文字面と、日本語/朝鮮語/台湾 EUC、それに日本語の Shift-JIS の文字列は、「機械的」 には まず区別しようがないから、日本語環境のブラウザはこれを 「英文字が多いが日本語文脈」 にしてしまう。結果として、ISO-8859-1 によるフィン語の一部が 漢字と 「半角カナ」 に化けているらしい。(なお、このフィン語を正しく読みたい方は、MS-IE では マウスで 「エンコード」 を 「中央ヨーロッパ言語 (ISO)」 にされたい)

(余談だが、アメリカの大手の企業が国外に郵送の発送拠点を持つのは、昔からあった。週刊 "Time" は日本国内から発送されたが、請求書や契約更新の案内はシンガポールから届いた。Mac OS の各版も、パッケージングはマレーシアだったかで日本語版も行なわれて、日本に船で運ばれた。いま現在どうなのかは知らないが、あまり変化はないだろう。Microsoftの hotmail.com は、とにかく "msn.fi " と見えているように、フィンランドにあるらしい)

で、図からは外れてしまったが "Mail" タブがあり、そこをクリックすると まずメール受信ページになる。そこでは − こうして日本語環境の Windowsで、その付属ブラウザで見る限り − 完全な日本語ページが表示される。

では、同じ www.hotmail.com に、韓国から、台湾から、ロシアから、北京から、イスラエルから それぞれアクセスしたらどうなるか? 図の 「入口」 ページは、そこで使うパソコンごとに異なるバケ方をするだろう。つまり、ここで日本語の漢字にバケたものは、それぞれ現地で使うパソコンの 「言語」 環境に合わせてバケるにちがいない。
が、その次、"Mail" タブをクリックするとどうなるだろう?
実験したことがないのでわからないが、次の3つのどれかだ:
(1) アクセス元の地理的な位置から判断して、メール画面は 「その」 パソコンの 「現地」 の 「言語」 で表示する
(2) アクセス元の地理的な位置には関係なく、そのパソコンという環境から判断して、メール画面は 「その」 パソコンのデフォルト言語系の 「言語」 で表示する
(3) アクセス元の地理的な位置には関係なく、アカウントの持ち主の 登録住所の 「言語」 系で表示する
もちろん、顧客それぞれが何語で行動しているかはわからないので、ページ本体は Unicode で作成することはできる。が、その顧客あての個人メール (個人発、個人あて) が Unicode で書かれているケースは まだ ほとんどない(!) し、常識的には (2) または (3) ではなかろうか。事実、Unicode を扱えない古いブラウザでも hotmail のページは日本語で読めるし、JIS によるメールも古いブラウザで読めるから。もちろん、日本国内発 受信済みメールの ほとんどすべては JIS で書かれている。が、(1) も排除できない。「より親切」 には、Windows Update がやっているように、アクセス元の地理的な位置に関係なく、アクセス元パソコンの基本言語に従うかもしれない (日本で日本版 Windowsを動かして Windows Update をすると 日本語表示が出る; 日本で韓国版 Windowsを動かして Windows Updateをすると、ハングル表示が出る。この選択は、パソコン側 Windowsが呼び出し先を選んでいるのか、それとも Windows Update サイトが 末端パソコンの基本設定を読んでいるのか、僕は知らない)。

さて、それでは、私は私のパソコンを持って、韓国 (あるいは中国、台湾、香港、ベトナム、インド、アフガニスタン ・・・) に行きました。そこから (現地のプロバイダと契約した、あるいは職場・学校の LAN 経由で) hotmail を見たらどうなるでしょう? それは、「私のパソコン」 をそこにつないだ場合と、現地の機械、現地のインターネット・カフェなどで見た場合とで、異なるでしょうか?
聞いている話では、現地の機械では、文字化けして 自分のメールがまったく読めなかったという例が かなりある。が、現地に自分の機械を持ち込んで その機械での文字化け (日本から持ち込んだ日本語系のパソコン) の例は、まだ聞いていない。すると − おそらく、hotmail が 「外国現地」 で文字化けを起こす理由は、次の2つのいずれか、そのうち期待的には (2) である:
(1) hotmail は、アクセス元の地理的な位置から、そのメール画面の表示 「言語」 を選択しようとする
(2) hotmail は、アクセス元の地理的な位置ではなく、パソコンの基本的な 「言語」系にあわせて、あるいは アクセス者つまり顧客 (会員) の登録住所の 「言語」 でメール画面を表示しようとする
もし (2) であれば、自分の機械を持ち込めばよい。現地の機械にも 「日本語」 表示は出るはずだが、その機械に 「日本語」 そのものの表示メカニズムが実装されていなければ、表示はめちゃくちゃになる。この場合の解決法は、現地の 「その」 機械に 「日本語」 を乗せることだけである。学校・職場であれば、どうにかなるだろう。しかし街のインターネット・カフェでは、やや困難かもしれない (アメリカの中国人街、韓国人街、新宿近辺の韓国人街みたいな 「日本人街」 のインターネット・カフェでもない限り)。

もし (1) であれば、「私のパソコン」 を持ち込んでも、サンフランシスコのチャイナ・タウンで、メール画面は英語であろうとするだろう。これを、案内文はともかく、メールの表題だけでも日本語で表示させることができるかどうか、それはブラウザによる (「これは英文」 と指定されているページを、強制的に 「これは日本語」 と再解釈させることができるかどうか。それはブラウザという名前のソフト次第だ)。今のところ僕の得ている感触では (2) だと思われるのだが、心配な方は 出発前に複数、数種類のブラウザを用意して (自分のパソコンにインストールして) おくのは、まったくの 「上策」 である。
なお、受信メール画面で各メールの表題が文字化けしても、その本体は 日本語で読めることはまだ期待できる。受信メール一覧ページの 「言語」 と、各メール本文のページは別だから。ただ、それらのすべては 「Web メール」、ここでは hotmail という Web サイトの CGI の機能によるので、ユーザ側には いかんともしがたい面があるのは事実だ。

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(20040601-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (10) − まとめ 1

6月になってしまった。この連載、僕の例によって過度に複雑になってしまったので、結局 (6) 現地のメール・サーバを使わないですませる方法/コロンブスの卵 を結論だということにする。
この結論 (または方法) から排除されるのは − つまり、この方法を使えない人は − 次のような場合である:
あなたの現在のメール・アドレス、つまりそのメール・サーバが、インターネット 「外部」 からの接続を許さない場合。
またはメール・サーバが直接インターネット外部からは見えない場合 (外部からそのサーバへの到達経路が遮断されている場合、つまりそのサーバが ファイヤウォールの中にあって、「外からは入れない」 場合)。
現地でプロバイダ契約したら、そのプロバイダの言いなりにならず、まずメール・ソフトの設定だけは 日本にいたときのまま 受信・送信を試みていただきたい。もし受信ができれば、送信もできる。多くは Send After Read (場合によっては専門用語で SMTP after POP と書いてあることもある) になっているだろうから、「いきなり送信」 に失敗しても、がっかりしないこと。まず、たとえ受信するべきものがなくても (自分のメール・ボックスが空だとわかっていても)、受信を試みる。これは POP というプロトコルで 当方の身元を明らかにする意味を持つ。そのまま接続を切らずに、送信ができる。

これが動かない場合には、仕方がない、次善の策は Web メールだろう。
Web メールについては、「文字化け」 問題が常に まといつく。詳しいことは 次回で説明するつもり。

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(20040528-1) 「人を食った話」 の例文 「応募」 例

彼は言う:
えーっ、400字 20枚の日本語から朝鮮語への翻訳を 2日で 2万円でやれって、ずいぶん人を食った話やね。
これは、業界の常識値(ね)を知らないとわからないだろう。まず、「20枚」 を2万円なら、1枚あたり千円である。400字あたり千円というのは、まともに読めない 「機械翻訳」 程度のお値段である。そこから先が、翻訳の 「質」 の問題。かつて、プロの訳者による文面なら、末端価格は最終的に 400字あたり ¥4,000から ¥5,000 というのが、彼の考えだったし、僕自身 今もそう考えている。だから、それを払う意思のない依頼は僕も断っている。

第2に、それを 「2日」 でやれ、というのは、機械翻訳のでたらめでよいか、あるいはネイティブのなぐり書きの手書き原稿でよい、程度を考えるか。あるいは 「かつてなら」 特急料金を上乗せすることになった。
彼は業者として、訳者を選び、連絡を取り、原稿を受け渡し、その結果を受け取るだけで前後2日は見る必要がある。実際の作業期間は、訳者による。 「20枚」 を急いでくれと言われれば、僕だって2日でできないわけではない。が、ネイティブによるチェックまで通す時間はない。その品質を確保するためには、もう1日ほしい。仮に訳者がネイティブであれば 日本語側の解釈チェックを通したいだろうから、事情は同じだ。だから、所要時間は合計5日、1枚あたり ¥4,000 なら 「20枚」 では 8万円。「特急料金」 を取るなら ¥10万くらいと言いたいところだ。この価格でも、5日で ¥10万。これでは 業者と訳者 双方が生活を支えて行くことはできない点に、できれば留意されたい。

翻訳業界は、十数年前のバブル崩壊期から 変質しはじめた。「英語 -> 日本語」 の翻訳では、当初 「400字あたり ¥2,000」 レベルが ¥1,400 レベルに、これはさらに値切られて、おそらく今では ¥1,000 を割っているだろう。
翻訳業界は、あやしげな 「SOHO」 つまり現代のパソコン 内職業界に転落した。意味の取れない機械翻訳なら 400字 数百円しない。業界内部ではそれを下書きとする 内職の 「文面直し」 が、ほとんどの 「翻訳者」 の仕事になり、さらにワープロ仕上げする。それが 「ハイテク」 の実体/実態である。当時 「自動翻訳に興味はないですか」 と聞かれて、僕は 「自動翻訳を作ることには関心がある。しかし既存のそれを使うことには何の関心もない」 と答えたものだ。それで僕は、英語の翻訳業界からは外されたし、僕自身が去った。
「翻訳」 は生活を支える 「翻訳者」 の仕事から、内職程度の 「SOHO」、主婦のパート以下になった。パートなら身体をそこに運べばよいが、「SOHO」 主婦は パソコンとインターネットを必要とする。今ではその主婦らをだまし、まず高いパソコン・セットを買わせる詐欺業まで繁盛しはじめている。

「20枚、2日、2万円」 という要求は、かつて繁栄した 「翻訳業界」 なら一笑に付される要求である (であった)。が、そんなの主婦の内職程度だと考える現代の客は、そういう要求をしてみる。お客さん、人をバカにするんじゃないよ。「人を食った話」 という語には、多少ともユーモアないし諧謔が (本来) 含まれるものだと思うのだが、しかし友人は 実際に受けたというこの 「依頼」 に、本気であきれ、怒っているらしい。それをせめて、浪速口調の 「ずいぶん人を食った話やね」 と表現するのが、まあ彼の人格かもしれない。


(20040527-1) 外国人のための、日本語 「人を食った話」 の意味の講釈

日本に 10年もいる韓国からの留学生たち、それも日本文学をけっこう読んでいる (それを比較文学の素材として、韓国 (朝鮮) 本国の作品と比較あるいは対照する目的で、修論なり博士論文なりにする) 人たちの中でも、この日本語表現を知らない人が多いのに 驚いたことがある。この日本語表現は、典型的には こんな風に使われる:
「ずいぶん人を食った話だなあ」
もちろん、例えば 「人を食った話」 という題名の本や短文があるとしたら、それは 「食人」 を扱ったものであるかもしれない (例えば 1945年までの敗残日本兵の話、あるいは中国のカニバリズムの系譜)。が、その大半は落語の 「おち」 みたいに、「人を小馬鹿 (こばか) にした」 話であろうと思う。これは翻訳不能に属す表現で、あえて朝鮮語で説明すれば (人をバカにして言う) 発話・発言を 「人を食った話」 と呼ぶ。例えば − なかなかうまい例が出ないのだが − 「ああ、あいつね、何でもできるから 適切に使っておけ。どうせバカだから、給料も適当にな」。

でも、上の例文も 「まったく適切」 な例ではないような気がする。「人を食った」 表現というのには、まだ何かユーモアがなければならない。短文、随筆などで重々しい表題が付いていて、読んでみると その内容は 表題に引かれて読んでくれた読者自身をバカにするようなものがある。それが、 「人 (ここでは読者) を食った」 話法なのだが、
日本語のネイティブ・スピーカー諸兄へ: 何か適切な例はありませんか?

なお、「千と千尋の神隠し」 の 「神隠し」 が韓国では翻訳不能で (行方不明) になっているのは、この例ではない。これは 「翻訳不能」 を処理できなかった訳者の無能でこそあれ、少しも 「人を食って」 はいない。「人を食った」 表現というのは、それを聞いた当人が そこそこ本気で腹を立てて怒る、歯ぎしりして くやしがるような内容なのだが、その内容・表現をよく見ると、正面から反論するのがばかばかしくなるような、「こりゃ どうにもならんわ」、だから
「ずいぶん人を食った話だなあ」
とでも応じる以外にない − これじゃ 「講釈」 になってないですな。
日本語のネイティブ・スピーカー諸兄よ、何か適当な例文はありませんか?


(20040526-1) 「うなぎだ文」

ソフト屋の同僚で、「へえ、「うなぎだ文」って言うんですか」 と言われた記憶は、15年くらい前の話だ。彼は、その点 理解が早かった (速かった)
− あんた、うなぎだったねえ
− べらんめえめ、俺がうなぎであるわきゃないだろう。俺は人間だ。人間の俺様がうなぎを食うのだ
もっとも、また別のソフト屋の同僚も 「雑食」 を自慢にしていて、
− 俺は何でも食うんだなあ。一番すごいのは 「人を食って」 ることだな
まあ、やつは 何でも自分が一番で、彼の発言は常に 「人を食った」 発言であることを 自覚し、かつ誇りに(?)思っていたらしい。

過去 22年の間に、「いる」 と 「ある」 の本質的な差 (意味論的な差、分別点、または排他的対立点) を問われて、わずかの間に正解を出してきた例も、ソフト屋が2人いた。まじめな外国人は、日本語の学校で この説明を受けている (はずだ) が、しかし 普通の日本人でこの区別を正確に自覚している例は 極めて少ない。つまり、俗に 「いる」 は動物 (天井に蝿がいる)、「ある」 はモノ という通俗的な認識しか、「普通の」 日本人は持っていない。ところが、「成田空港には飛行機がたくさん」 いたり、「駐車場の前によその車が」 いて、出られなくて困ることがある。そうかと思うと、成田空港の JAL のオペレーション・センターの職員は、「うちの 747 は今ここに3機ある」 から、あそこの代替にはこの機を出せる、と言っているだろうし、「我が家には車がある」 と言い、また 「うちの駐車場には私の車がいる」 は おかしい。区別は どうも 「動く」 かどうかにも関連するらしいが、「よその車がいる」 のと、「うちには車がある」 のと、我々はどう使い分けているのだろうか? 実は この問題、ネットワーク上では数年に一度、もう 10回も?話題にしてきた。我々はこの使い分けを無意識、かつ自動的にやっているが、使い分けている以上 「何か」 本質的なちがいがあるはずである。日本語を母語とするあなた、この 「本質的な」 ちがいは なんですか?

(1) まず 「よその車がいる」 と 「うちには車がある」 を、我々が自動的、反射的に使い分けている根拠、この2つの本質的な対立関係を、明確な言葉で、自分自身に対して説明してください。
(2) 次に やや大きいバリエーションで、深夜0時、「まだ電車がある」、今なら間に合う。でも行き先によっては 「もう電車はない」。(1) で明確に対立関係を説明できたのに、ここでは なぜ 「電車はある」 に戻ってしまったのか? もちろん、外に出れば 「タクシーはある」。タクシーは 外にたくさん 「いる」から、おカネはかかるが帰ることはできるのだが。


(20040525-1) 閑話休題

下の記事 (20040521-1) は、書いている間に 既にそうだったのだが、「頭の体操」 が すぎるらしい。書きながら既に、「補足」 をしていると さらに複雑な図になって行くことが憂鬱だった。書いている側がそうなのだから、読む側が 耐えられるわけがない。
やはり、現実的な線は (6) 「コロンブスの卵」 あたりにあるのではないか − つまり、外国に中期間 (ごく短期でもない、数年に渡る長期でもない期間) 出る場合、現地のプロバイダと契約はするが、メール・サーバは (つまりパソコンのメール・ソフトの設定は) 「いま使っているプロバイダのメール・サーバ そのまま」、ただ単に電話のつなぎ先 (より高速な回線ならなおよいが) だけを現地のプロバイダとする。
現実問題として、これ以上 複雑な経路を考えても、パズルの好きなパソコン・マニアでもなければ、強いられる 「頭の体操」 には耐えられないにちがいない。僕自身 職場で2つのメール・サーバ、数種類のメール・ソフトを使いながら、ときどき錯覚を起こすことがある。この連載はそろそろ切り上げにしたい。あと1度か2度、Web メールについて補足するくらいで終わることにする。

「頭の体操」 で僕自身も疲れたのか、たまたま本屋さんに行った。ちょうど手持ちのおカネがあったので、「ハリポタ」 第4巻 「ゴブレット」 上下2冊セットを買った。買ってみると、あらら、消費税が付いて ¥3,999。なるほど、そういう値付けだったわけね。
この巻は、12ヶ月かけて原文を読み終わったばかりだ。原書が千円で買える (し、既に買ってあった) のに、この値段の訳本を買うのはバカバカしかったのだが、上の子が中学くらいになったころには、もう手に入らないだろう、だから今のうちに買っておく必要があるとは考えていた。ま、シリーズものの本は、初巻から終巻まで同じ体裁の同じシリーズで揃えておくのがよいだろうと。だから僕のハリポタは、結局 イギリス原文 ペーパー・バックのセットと、日本語訳のハード・カバーのセットということになるだろう。

25年前の恩師が、パソコン買い替え。それにお付き合いした。まず電話モデムで既存のプロバイダへの接続を確認した。そこまではよかったが、では 旧機 との間でデータ交換するのは LAN で、「買った瞬間につながる」 はずだったので後回しにした。ところが、これが動かない! 新機は Windows XP、旧機は Windows 2000 で、ネットワーク設定の手順がやや異なる。当日は タイム・リミットで断念したら、追い討ちが来た: 「お前が帰ってから、新機では電話もつながらなくなった、メールもできない、ホーム・ページも見れない」。=3
すべて手操作で設定しようとしたのがいけないのか、XP の 「スタート」 メニューに 「マイ ネットワーク」 が現われていない。どうも、「電話」 と LAN の混在で 何か矛盾が出ているか、あるいは 「ウィザード」 を使わないと意図した関係が出来てくれないのか。放置するわけには行かないので、今週はもう1度 恩師宅を訪問することにする。

我が家の VHS ビデオ・デッキは、ほぼ死んだ。ほとんどまともに動かない (らしい)。今のところ、TV の録画はパソコンだけ。このほうが、「ビデオ見るならコンピュータで見ろ」 と言える。コンピュータで見るためには机の前の椅子に座る必要がある。従って 就寝前にゴロ寝でビデオを見る、というわけに行かない。その意味では具合がよい。録画精度は今も 「ビデオ CD レベル」 なので、今のところ 40GB はパンクしていない (パンクさせないように、最近は4年生も 一度限りの録画は 「消す」 ようになった。ただし、彼女の操作ミス歴があるので、今は 「ゴミ箱」 には残す。時々、父親が ゴミ箱を空にする)。今年後半のために まだ空の 40GB を残してあるので、今年いっぱいは なんとかなるか。

79才の父の 「ワープロ」 代替パソコン、つまり僕の旧 FAX 受信機は、すっかり準備ができているのだが、さすがに 「今からパソコン」 は負担に感じられるらしい。モニターとプリンタが要るので それらが4万円、そのくらいの おカネの負担はできるというが、今は まだ 息子の手元に置いといてくれと言う。その気になったら 「こっちから電話するから」 と。はて、本当にこの機械が彼のところに行くか、それとも 今の子どものビデオ機 (兼・FAX 受信機・兼・その母親のメール機)、あるいは僕の機械が 父に回って行くか、あるいは父が他界するのが先か − まったく微妙になってきた。

唐突で恐縮だが、恩師のパソコンを買いに行く途中、TOYS''US があった。「トイザラス」。師は、この店をご存知ない。どういう意味かと聞かれて、あれは "Toys ARE us" と読むのだと お教えした。自動的に、これは 日本語でいう 「うなぎだ文」 であることを思い出す: 「僕はうなぎだ」、「わたし、ざるそば」。朝鮮語でも というのがある。「おもちゃは うちだよ」。アメリカの食堂でも しばしば、You are coffee, sir? と注文の確認が取られるのを思い出した − これは、実は何度も書いたことがあるけれど。


(20040521-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (9) − 日本と現地、2つのメール・サーバをフルに使う

ここまでの記事で、事前に説明するべきことは ほぼ説明した。今回は その総集編として、ほぼ最後の頭の体操を 読者に強いることになるだろう。だから、その前に 「おさらい」 をしておこう:
(6) 「コロンブスの卵」 までの間に、メール・サーバとプロバイダは別のものであることを説明した。つまり プロバイダというのは物理的にインターネットにつなぐ 「経路」 を提供する業者のことである (この 「プロバイダ」 は 必ずしも 「業者」 である必要はない。学校、研究機関、職場という 「経路」 供給者 であってもかまわない)。このプロバイダは、通常、そのサービスに付帯して メール・サーバを用意してくれる。これを使うか使わないかは、客の勝手である。だから、日本と外国現地、2つのプロバイダのうち、現地側メール・サーバをまったく使わないのが (6) 「コロンブスの卵」 の説明だった。
また、「どこのメール・サーバを使うか」 は、「わたし」 自身のメール・ソフトの上で決定することであることも、ここまでで 説明してある。

(8) 「やや常識的な」 では、逆に外国現地側のメール・サーバを積極的に使う例だった。ここでは、「では日本側に届くメールはどうするのだ」 という問題を解決するために、「日本側のメール・サーバから 現地のサーバに 「転送」 してもらう」 という方法を取る。
ただし、現地のサーバでは ウィルス・チェックをしていないだろうこと、それが問題になると、警告しておいた。

「転送」 については、(3) Web メール のところでも説明した。
さて、ここまで つきあってくださった読者には、ほぼ最後の頭の体操をしていただく。どの程度に複雑かというと、下記の通り。これは、今までの説明を理解した方には 必ず理解していただける。(冗談みたいだが、例えて言うと、碁石の 「五目並べ」 で 「3手 先」 には必ず 四・三 を作るべく 頭は常に体操をしているはずである。大人と子どもでは絶対に大人が勝つのは そのせいである。以下の図は、その程度の論理、ロンのチェスや ハーマイオニーのアリスの7本の瓶の論理問題よりは はるかに簡単である)

直接ラピュタに届いたメールは、
一度 日本のサーバに送ってから、読みもどす
左の図で、パソコンは直接 手元、つまり外国現地のプロバイダにつなぐ。そのプロバイダではメール・サーバを用意しているので、現地からのメール発信にはそれを使う。つまり、メール・ソフトの上での 「SMTP サーバ名」 は captala.rtt.ne.rp である。

一方、メールの受信には、(6) 「コロンブスの卵」 と同様に 日本側のメール・サーバを使う、つまり これが僕自身なら、現地で使うパソコンでも、メール・ソフトの上での 「POP サーバ名」 は tka.att.ne.jp である。つまり受信要求を 現地サーバの頭越しに (現地のプロバイダの 「通信中継」 機能だけは使うが、そのメール・サーバを 「受信」 には使わず) 日本までつなぐ。その結果、日本から 「わたし」 あてのメールが送られて来る。図の 赤い矢印 の右側 末端が メール・サーバを串刺しにして通り過ぎているのは、その意味である。

では、現地ラピュタのメール・アドレスで発信したメールに、返信を返されたら、どこに届くか? もちろん、ラピュタのメール・サーバに返って来る; が、ここで 「転送」 を使う; ラピュタのサーバには、「私あてのメールは すべて 日本側の 「あの」 メール・アドレスに転送せよ」 と設定する (してもらう); それも、例外なくすべて転送、転送とともに痕跡を残さず当サーバ上からは削除、とする ((3) Web メール でも、(8) 常識的な線 でも、「私あてのメールをあそこに転送してくれ」 ができると書いた。それらは、日本側に届いたメールを 他のサーバで見たい場合だった。が、この場合は、逆に すべてのメールを日本側の 「私」 に転送してもらう)。
すべての受信メールは、一度 日本側サーバに集中させる。だからメール受信は、日本側サーバにつなぐ。くどいようだが この 「つなぐ」 とは、あなたの使っているメール・ソフトの中での 「POP サーバ名」 の欄に、日本側のそれを書いておくという意味である。

念のため、(5) 「メール・サーバ」 で説明したように、送信:SMTP、受信: POP はそれぞれ個別にサーバを指定するものであって、この2つが同じプロバイダの同じメール・サーバである必要は まったく ない。むしろ、社内 LAN を自力で構築している企業の内部では、送信サーバと受信サーバがそれぞれ社内の別の機械に指定されていることがある (そうしておけば、一方のサーバが死んでも他方のサーバは生きているし、サーバ内の個々の設定が簡単になるから)。

余談だが、上の図は 「日本」 と 「外国」 の間を想定したが、実は 「日本」 の中でも、数日前までの僕の職場環境がこうなっていた。左は僕個人のプロバイダ上のサーバ、右は職場のサーバである。職場の者として職場から発信するメールは 職場名が発信名になる。その返信は 当然 職場のサーバに返るが、それらはすべて個人サーバに転送してしまう; それらのメールは、「私的」 なメールと混在して すべて僕個人のプロバイダ上のメール・サーバから受信する。どの経路で来たメールなのかは、宛先名でわかる。
「数日前まで」 そうだった というのは、数日前に職場側サーバに変更があって、職場あてメールは 僕個人にも転送されるが、職場のサーバにも 「残る」 ようになった点である。これを放置すると 「職場の私あて、職場のサーバ上に残る」 メールがパンクするので、別のメール・ソフトで、「職場の中から 職場の POP サーバを読む」 ことにした。結果は、そのソフトでメールを読むと、仕事のメールだけがそこで読める。一方、既存のままのソフトで読むと、職場のメールも私信も、すべてが読める。
「職場あて」 または 「現地あて」、それと 「私個人あて」 または 「日本あて」 を、明確に区別する意味では、2つのメール・ソフトを使い分けることは有効である。が、一般論として、いま想定している読者に 2つのメール・ソフトを併用することは勧めない。
上の図式で問題に見えるのは 「日本」 と 「現地」 の経路が遠いことである。が、それ自体は 僕は問題ではないと思う。いずれ 「遅い」 のは 「わたしの手元」 の電話線であって、プロバイダから上、インターネットへの経路は、どんな 「田舎」 の国でも 10Mbps を下ることはない。前に別の記事で書いたが、「インターネット全体」 の スループットは、おおよそ 1Mbps くらいに見える。これは かつての 「高速」 ISDN 64Kbps の 16倍の速度である。

もう1つ問題に見えるのは、経路が遠いので 「途中で盗み見」 可能な中継点があるかもしれないことである。が、一般論として、「あなたは要注意人物としてマークされているか」。中継点には、毎秒 (である、毎分ではない) 何百通というメールが集中・通過・分散して行く。国際間の中継点をすぎれば、もう誰も 「あなた」 のメールに注目する人はいない。誇大妄想的に 「自分の存在」 を過大評価する必要はない。そもそも (8) 常識的な線 であれ (3) Web メール であれ、いずれ 「現地」 で読める以上、「誰かが盗み見できる」 転送経路上の点は存在する。しかしその経路上で、犯罪として盗み見するには、かなりの技術力と物理的な侵入手段を必要とする。警察・公安に類する機関が組織的に監視することはありうる; それは、実は USA 国内でも問題になっていることで − 従って USA に関連をもつ あらゆる人に関係することで − それを理由に 「わたし」 が神経症を起こす合理的な理由など、ない。要は、警察・公安に見られて困るようなことを書かなければよい (ヒマな人は、アメリカ大統領暗殺計画を日本からラトビアに送ってごらんになられよ。結果は、よろしければ教えてくださいな)。

もとに戻って、「経路が遠い」 のでメールの転送・受信に要する時間がかかるのではないかという心配は、まず ない。時間が (もし) かかるとしたら、現地 末端のメール・サーバの 「転送」 周期が数分に1回程度である場合。それから、日本側のメール・サーバのウィルス・チェックが混みあっている場合。
日本の、同じ東京の中だが、上の図の左右のサーバ間での転送は、しばしば 数分 待たされる。この数分の多くは、混みあう ウィルス・チェックの時間だと思われる (例えば Excel のファイルなどを添付すると、AT&T のサーバがウィルス・チェックで手間取っているのか、数分かかることがある)。
この 「転送」 は、「同じ東京の中」 でも、プロバイダ (回線業者) はまったく別なので、かなりの数の中継点を通過する。実はこの中継点数は、都内同士でも、都内と han-lab サーバ (大阪) の間でも、都内とカリフォルニアの間でも それほど変らない。この中継点の数を HOP数 と呼ぶが、先日調べた限りでは、東京から大阪より、東京からカリフォルニアの方が近かった。これが東欧、旧ソ連、アフガン、パキスタンとなると どうなるかわからないが、しかし国際転送なら最短経路で国際回線に合流するので、おそらく大丈夫。実際、先日 聞いた、旧ソ連圏から ODN のサーバに直接 「コロンブスの卵」 接続している人からは、「サーバの反応が遅い」 という話は聞いていない。
(未完)

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(20040518-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (8) − やや常識的な線に戻って

だいぶ 「頭の体操」 が続いた。
いま一度、ごく常識的な線に戻って、「外国現地のプロバイダと契約する、そこを拠点にインターネットにアクセスする、メールも原則的にそのプロバイダを使う」 ことを考えてみよう。この場合、もちろん日本側のプロバイダにも 「わたし」 あてのメールは届くことを考えておく必要がある。

ラピュタのプロバイダと契約し、
そのメール・サーバを使う
「わたし」 はラピュタに滞在して、プロバイダ契約した。プロバイダ内のメール・サーバが使える。わたしのメール・アドレスは kenm@captala.rtt.ne.rp である。ここから、日本あてにもメールが出せる。もちろん、このアドレスに メールを送ってくれる人もいる。

ところで、日本側プロバイダとの契約も維持しているので、この (左側) メール・サーバからは、「私あてに受信したメールはすべて、例外なく kenm@captala.rtt.ne.rp に転送」 してもらう。その転送にあたっては、日本には数ヶ月帰らない予定なので、日本側サーバにはメールを残さない。つまり 「痕跡を残さず」 完全に、単純に転送してもらう。(実はこの 「転送」 自身も SMTP だが、「わたし」 の意思でそう設定する (してもらう) のだから、他の部分と意味合いが異なる。だから ここだけ矢印の色を変えてある)。

ラピュタのメール・サーバに 「メールを読みに行く (POP)」 と、直接ラピュタあてに来たメールも、日本から転送されて来たメールも まとめて読める。どの経路で来たのかは、宛先 (わたし) のメール・アドレスを見ればわかる。普通のメール・ソフトでは、詳細な転送経路と時刻もわかる (ただし MS OE では、「そのメールのプロパティの詳細」 を わざわざ見ないとわからない)。

これで、何がいけないの?
いけなくは、ない。ただ、ウィルスが心配なだけ。
前にも書いたが、日本では電子メールが 「一般人」 にまで拡大してしまったので、日本のプロバイダ (の メール・サーバ) では、ほとんどの場合 「当社を通過・経由するメール」 のウィルス・チェックをしてくれる。その意味で、このチェックをすりぬけてくるウィルスはごく少数である (どの程度かというと、新種のウィルスで まだ ウィルス・チェックのソフトに知られていないものは 排除されない。一般に新種発見からその対策が稼動するまで、一流のプロバイダで1日半から2日くらいかかる。そのわずかな間に新種のウィルスが 「わたし」 に向けて投げつけられると、「わたし」 にはウィルスが届く。が)、ウィルスが届く確率はドラスチックに低くなる。

ところが、ラピュタのプロバイダでは、このウィルス・チェックをしてくれない。ラピュタに 青矢印 で直接届き 赤矢印 POP で受信したメールには、高い頻度でウィルスが添付されてくる。現地の客はモサばかりなので 「これはウィルス」 と見破る目が肥えているかもしれないが、我々は そうはいかない。

だからこそ、Norton、McFee といった 「ウィルス対策ソフト」 を使っている方も多いはずである。が、はっきり 申し上げておこう: 「あなたは、そのウィルス対策ソフト、毎日、または毎週必ず情報更新していますか?」。買ってきたままのウィルス対策ソフトは、その出荷時点でのウィルス (だけ) しか知らない。だから この種のソフトは、買ってきた瞬間から その場で 「最新ウィルス情報」 を オンラインで更新しなければならない。それを、できれば毎日、せめて毎週、最悪でも月に一度は 「更新」 し続けなければ、「ウィルス対策」 には何の意味もない。
自宅の回線が ADSL や光で常時接続、パソコンも 24時間稼動であれば、毎日2回くらい 「ウィルス最新情報の更新を自動的に」 することもできる。が、今ラピュタでは、通信回線は 「普通の電話」 程度であると想定している。毎日 宿所に帰って、あなた、ウィルス情報更新し、その上で受信メールをチェックをしますか? こんなウィルス情報管理など、どう考えたって、大手のプロバイダにやってもらうに限る。

なお、ラピュタに直接届く (ので私が感染するおそれがある) ウィルスの数を極力 減らすには、次の方法がないではない。メールを送信するとき、私が 「ラピュタの」 メール・サーバにつないでいることを隠すことはできないが (いや、「闇」 系ソフトを使えば できるが、今は考えない)、その際 次のように 「返信先」 を明示しておく:
To: 相手のメール・アドレス
Reply-To: 「私」 の日本側メール・アドレス
こうしておくと、相手にメールが届く; 受け取った相手が素直に 「返信」 をすると、下側の Reply-To アドレスに返信が出る。この返信は 「日本側」 サーバに届くので、そこでウィルス・チェックを経たうえで、再びラピュタに転送されて来る。

ただしそれでも、ラピュタのアドレスに直接 送られてくるメールのウィルスは、避けられない。特に自分のホームページを持っている人で そのページ上に ラピュタのメール・アドレスなどを書いておくと、世の 「メール・アドレス収集業者」 に収集されて、次には 「ウィルスを送るランダムな宛先リスト」 に含まれて行く。

だから、ウィルス対策は面倒。自分では やりたくない。プロバイダにやってもらいたい。そのチェックをしないラピュタのプロバイダを発信点としながら、しかも 受信は 「すべて」 日本側プロバイダでチェックしてもらうわけにはいかないか?
いや、これは 「日本」 のプロバイダである必要もなくて、チェックしてくれるのは Web メールの hotmail でも yahoo でもかまわない。
その話を、次回に。

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(20040517-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (7) − コロンブスの卵 補足

前回の記事では、「インターネットの外側から (日本の) 私のメール・サーバにアクセスする」 方法を説明した。その中で、最後に 「自分自身が契約しているプロバイダの、その構内のメール・サーバへのアクセス」 は、サーバの 「下から (電話なりその他の直接通信)」 であろうが、「上から (インターネット経由)」 であろうが、何のちがいもないと、説明した。

メール・サーバの上下から
アクセスが競合するとき
では、この説明を重ねると、要は 「自分のメール・サーバには どこからでもアクセスできる」 ことになる。
図が、多少 複雑になったのは お許しを。この図でも 左は日本の留守宅、右はラピュタに滞在する私のパソコンである。ラピュタでは、通常こうして 「日本のメール・サーバ」 つまり 「日本で公知してあるメール・アドレス」 で、日常的にメールを使える。その一方で、留守宅のパソコンに火が入って、自動的にメール・ソフトが起動するようになっていると どうなるか。問題は2点:
(1) 留守宅で家族が 「私」 の名前でメール発信してしまう
(2) 留守宅で家族が 「私」 あてメールを読んでしまう (受信してしまう)
(1) については よくあることで (夫の名前で妻が友人とメール交換する、またはその逆)、大したことではなかろう。ただし その妻 (または夫) と離婚交渉中だったりする場合には、相手側による悪意の利用がありうるので御注意。しかし それは当事者が心配することで、そういう時期に 妻 (夫) に自分のパソコンを使わせる人はいないだろうから、今は問題外とする。

問題は (2) 留守宅でパソコンに火が入って、そこで 「私」 あてメールが受信されてしまったら、そのメールはラピュタにいる 「私」 には読めるのか。「妻 (夫」」 が友人と勝手にメール交換した場合、その返事は 「私」 にも届くのか、逆に 「妻 (夫)」 にも読めるのか。一般論として、メールは サーバ上から 「読んで」 しまうと (受信してしまうと)、サーバ上からは削除される; つまり一度受信したメールは、2度と受信することはできない。メール・ソフトの ほぼすべてで、デフォルトではそういう設定になっている。この場合、「受信」 は 「早い者勝ち」 である。日本とラピュタの間で、先に 「読んだ (受信した)」 側にメールは届くが、一歩でも遅れた側では、そのメールは 「もう、ない」。妻 (夫) が友人に送ったメールに返事が来ても、「私」 が先に返事を読んでしまうと、妻 (夫) に返事は届かない。「私」 は、見ず知らずの 妻 (夫) の友人からの返事だけを受け取って 面食らうことになる。逆に 「私」 の待っているメールが 「妻 (夫)」 に読まれてしまって、「私」 にはついに届かないことも考えられる。

この問題について、唯一 正しい解決方法は、留守宅の家族には 「私」 とは別のメール・アカウント (つまりメール・アドレス) を用意してやることである。最近の ほとんどのプロバイダでは、「家族」 メール・アドレス というサービスをやっている。つまり、1つのプロバイダとの契約の中で、複数のメール名を持てる; メールの名前というのは人格そのものなので、そもそも名前ごとに異なるパスワードが要求される; 家族同士であっても 互いに盗み見することはできない。だから、充分に知識のある家族なら、「私」 の国外滞在以前から、メール名を家族数だけ持っているだろう。(ご参考までに 我が家では 「妻」 にその知識はないので、現在は彼女のパスワードごと僕が管理している。ツマ子用のパソコンには、彼女のメールだけが通る。現在9才、4年生の上の子は、3年後つまり中学生になるころには この 「メール名、そのパスワード」 の関係を理解しているだろうから、彼女のメール・アカウントを用意する必要が出て来る)



メール・サーバの上下から
アクセスが競合するとき (上と同じ図)
「補足」 の 補足に、まったく同じ図を使って、「自宅のパソコンと外出時のメール・アクセス」 を説明しておく。

左は、「私」 の自宅のパソコンである。このパソコンには、パソコン自体にパスワードをかけてある。従って家族は、「私」 の不在中 このパソコンを使えない。外出時には、このパソコンは電源を切るか、あるいはメール・ソフトだけを止めておく (実際には面倒なので、僕はメールだけを止めて外出する。数分後にはスクリーン・セーバーが動き、その解除にパスワードがいる。だから家族はこの機械を使えない)。外出時には 右側のパソコン つまりノートであれ 仕事先の自分の機械であれ、インターネット経由で 左のメール・サーバにアクセスする。ただし、外出時に 「読んだ (受信した)」 メールはサーバ上に残しておき、帰宅してから 改めて自分用の機械で (再)受信する。こうして、すべての 「受信」 メールは 自宅の機械の上で整理する。

サーバからメール本体を削除しない 「外出中」 設定
「一般論として、メールを サーバ上から 「読んで」 しまうと (受信してしまうと)、サーバ上からは削除される」 のは、ほぼすべてのメール・ソフトのデフォルト設定だが、これは簡単に変更できる。右の図は やはり MS OutLook Express 5 の例だが、この 「サーバーにメッセージのコピーを置く」 項目にチェック・マークを入れると、これだけでメール・ソフトの振る舞い方が変化する。つまり、外出先で自分あてのメールを読んでも、そのメールはサーバ上に残ったままになる。ただし、そのまま放置すれば、いずれサーバはパンクする。だから、「どこかにある1台の機械」 では そのすべてを受信し、受信と同時にサーバに溜まったメールを削除する。

これを左右反転させると、留学中にラピュタで使う機械では 「メールを読むと同時に サーバから削除」、一時帰国したときに使う機械では 「メールを読んだ後もサーバには残す」、つまり帰国している間だけは 右の図の設定にしておけばよい、ことになる。



ここまで、慣れない方には相当な 「頭の体操」 になったはずである。
理解できない部分は、正直に その旨 メールくだされば幸い。その際、「どこが理解できないのか」 を、できれば明確に書いてくださると答えやすい。

この後、2回か3回、以上で説明してきたことのバリエーションを考えている。実際、僕自身が 「自宅の機械」 と 「職場の機械」 の間でやっていることは、以上の応用にすぎない。
この他、実はそれも このバリエーションにすぎないのだが、Web メールの使い方、Web メールへの自動転送といった話題がある、自動転送の相手は Web メールに限らない。せっかく現地のプロバイダを使う、そこにはメール・サーバもあるはずなので、それらを有効に使いつつ、しかも 「ウィルス」 対策を考えるとき、どうするか。
外国に数ヶ月出る場合、しかも 日本側プロバイダと同じ程度の 対ウィルス安全性 − そのあたりまで説明したら、この連載を終えることができると思う。

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(20040516-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (6) − 現地のメール・サーバを使わないですませる方法/コロンブスの卵

2つのプロバイダと契約すると
「私」 のメール・アドレスは2つ存在することになる
(承前)
もちろん、今日のタイトルは 「現地のプロバイダと契約しないですませる」 の意味ではない。大手のプロバイダで 「現地」 でのローミング・サービスがゆったり使えるのでない限り、現地のプロバイダと契約して、現地での接続先につないで、そこを経由してインターネットにつなぐ; それは避けられない。
この場合、現地のプロバイダでも、「当プロバイダ内 メール・サーバ」 を用意しているし、従って 「現地のわたしのメール・アカウント」 が発生する (メールだけを断ることも できるかもしれないが、今は 「現地のメール・アカウント」 が発生すると する)。この場合、ごく素朴に考えて、前回と同じ 左の図式が頭に浮かぶ。ここで問題は、「わたし」 という人格が2つ存在してしまうことである。

この図で、左は日本側、右は現地ラピュタとする。ラピュタのプロバイダでは、いま 「わたし」 は
kenm@captala.rtt.ne.rp というメール・アドレスを持っているが、
一方 日本側には
kenm@tka.att.ne.jp というアドレスを持っている。
これで何が困るかというと、日本側アドレスに届くメールをどうするか、だ。日本側つまり留守宅には自分の機械が置いてあり、そこには信頼できる家族がいて、毎日 必ず 「私」 あてメールをチェックしてくれ、さらに必要なものを抽出した上で ラピュタにいる 「私」 あてに転送してくれるなら、いい; つまり 有能な秘書がいればよい。が、メールは私信、家族・ツマ子にも見せてはならない 「私信」 というものも ある。
もう1点は 「現地」 のメール・サーバを使うときの問題である。日本では メールを介した 「ウィルス」 が深刻で、プロバイダ段階でのメール・サーバは、しばしば 「ウィルス排除」 をしてくれる。これは ラピュタでは あまり期待できないことで、現地ではまだインターネットが特権層または技術者の独占物なので、メール・サーバ段階でのウィルス・チェックなどしてくれないところが多い。現地のプロバイダと契約し、そのメール・アドレスに切りかえたはいいが、たちまち ウィルスにやられた、という話は 後を絶たない。日本のメール事情は 「一般人」 にまで拡大したので、それに慣れた人は 予備知識とかなりの警戒心を動員しないと、国外に出たとたんに ウィルスにやられてしまうのだ。

電子メールの 「私」 はあくまで日本側のまま
そこで、コロンブスの卵 (余談だが、この ことわざは 日本に固有のものらしい。韓国でもアメリカでも、誰も理解しなかった)。
右の図も前回 掲げたもの そのままである。ここでは、メール・サーバは 上り・下りとも日本側になっている。この設定は、インターネットへの接続経路を指定するものではなくて、「メール・サーバの所在」 を指定するだけである。従って この設定を与えられた以上、メール・ソフトは あくまで指定されたサーバに接続しようとする。そのとき、インターネットへの接続それ自体が 存在しなければ どうしようもないので、やはり 「現地ラピュタのプロバイダ」 との契約は必要である。この接続経路を通して、メール・ソフトは 指定されたサーバに接続しようとする
この時のサーバへのアクセス経路、電文の流れを図で説明すると、次のようになる。

メール・サーバへの経路は遠いが
これでも 「私: 日本側」 サーバに接続できる
通常のメール・アクセス
図が 思ったより複雑になったので説明する。
ラピュタのプロバイダに接続した 「わたし」 のパソコンは、インターネットへのアクセス経路としてのみ このプロバイダを使用する。そこに 「わたし」 の現地メール・アカウントがあっても、これは使わない。メール・ソフトは あくまで、上で 「設定」 されたメール・サーバを求めて、現地プロバイダには 日本のサーバへの接続を要求する。通常なら直接つなぐ プロバイダ内部のメール・サーバへの接続が、インターネットをぐるりと回って、日本に届く。日本側のサーバは、この 「末端」 からの要求を受けて、そこから他宛へのメールを発信する。発信者は あくまで 「日本側プロバイダ上の私」 である。
受信についても同様で、通常は 直接プロバイダ内サーバへの要求だった POP が、インターネットをぐるりと回って 日本側に届く; そこでパスワード確認が行なわれて、めでたくメールは 再びインターネットをぐるりと回って 私に届く。この図で、「受信」 POP の赤線がインターネットを渡って長く伸びている点に注目されたい。

対比する意味で、日本で 「普通に」 メール接続していたときの関係を、下側に示す。
一見して大きなちがいは、「わたし」 つまりメール・クライアントが、メール・サーバの 「下」 にあるか 「上」 にあるか。実は、これはインターネット 「通信」 の本質的な問題には関係がない。つまり、要求がどちらから (上から、または 下から) 届くかは、最終的にはどうでもよい。ただし −

ただし、中には 「インターネット経由のメール・アクセス」 をきらうプロバイダがある。つまり こういうことを許すと、特に 「パスワードによる発信者確認」 手順のない SMTP (送信) については、 (ウィルス発信経路として使われることが多いから) プロバイダは神経質である。また、国内で 「回線業者+プロバイダ」 のセット販売をしているところ (例えば USEN、YahooBB など) では、この 「インターネット外部からのメール・アクセス」 を認めないのではないか (未確認)。

僕自身の確認している範囲では、まず プロバイダ AT&T (Jens-SpinNet) では、「外部からの SMTP アクセスを制限していない」 と言って来た (このプロバイダは 「送信」 メールについてもウィルス・チェックをするので、その意味で不安は少ないのかもしれない)。POP つまり受信も、実験中というより 数年前から確認している。ただし、AT&T の場合、"Send after Read" という 「制限」 を加えている。つまり、「お客様がインターネット外部から当メール・サーバにアクセスなさる場合は、送信に先立って必ず受信を行なってください」 である。メールを送信する前に、「(受信するべきものがなくても) 受信を試みる」 ことによって、つまり POP によるユーザ・パスワードが得られる。その上で、その接続を切らないまま SMTP送信をせよ、というわけである。

この他に実例を聞いた中では、ODN のメール・サーバが、まったく同じ "Send after Read" で この 「インターネット経由、自サーバへのアクセス」 を許しているそうである。(続く)

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(20040513-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (5) − 「メール・サーバ」 の意味

電子メールの 「設定」 は符牒に満ちている
今 「あなた」 の使っているパソコンに、「あなた」 自身の 「メール・アカウント」 を設定つまり登録した時のことを、覚えていらっしゃるだろうか? ほとんどの人は覚えていないはずで、一般に この 「設定」 は 慣れた人が周囲の人のために 「やってやる」 (やってもらう、やってくれる) 場合が多い。その おさらいに、右の図を見ていただこう。「メール設定」 を なぜ 「慣れた人」 に頼まなければならないか、思い出したでしょう? 図は MS OutLook Express 5 の例で、僕自身である。僕は このソフトを常用していないので 「パスワードを保存する」 にチェック・マークが付けてないが、あなたの機械では 付いているかもしれない。「パスワードを保存する」 とは、「メール・ソフトよ、私のパスワードを覚えていなさい」 の意味で (このあたりが、Microsoft-Japanese だ)、これをチェックすると そのたびにパスワードをキーボードから入力する必要がなくなる。

問題は、この小窓が 「符牒」 つまり 「暗号」 に満ちていることだ。「受信メール・サーバの種類」 までは、「POP3」 だと プロバイダからの指示があっただろう。が、それで、ここに書いた 「POP3」 と、その下にある 「受信メール (POP3)」 と 「送信メール (SMTP)」 とは、論理的にどういう関係にあるのか、誰か うまく説明できるだろうか? それも、同じ1つの (一人の、私の) メールなのに、なぜ2ヶ所も書く欄があるのだろうか? これをきちんと説明できる人は 多くない。でも、経験的に 同じものを2ヶ所 書けばよい、その経験を積んだ 「慣れた人」 が、多くは職場のみんなの世話をやいてくれることになる。

そこで、「外国に出たとき」 に限らず、まず 「普通のメール」 がどう動作するのかを 説明することにする。これを理解していただくと、上の謎の一部が解ける。また、これを記憶しておいてくださると、数回後の記事になると思うが ある種の 「裏技」 的なアクセス方法も理解していただける。が、今はともあれ、「ごく普通の、正常な」 メールの動作図式を説明することにする。格言通りに、「わかる・わからない とは、概念を理解するかどうかであって」、専門用語を使わないことではない。文法の専門用語である 「動詞、形容詞」 では難しいから 「動き言葉、飾り言葉」 に言い換える、という試みが行なわれたことがあるが、それで子どもたちが 「動詞、形容詞」 という概念を理解したとは思えない。だから、以下では まず POP、SMTP という用語をキーとして、メールの動作図式を説明する。

普通の電子メールでは
上りと下りのプロトコルが異なる
左の図で、左端のパソコンが 「あなたの」 パソコンである。右のパソコンは よその機械で、これは隣の家でもかまわないし、地球の裏側にあってもかまわない。「あちら」 のパソコンは、要するに 「インターネットのむこう」 にある。その置き場所が 10m 先の隣家であろうが 20,000Km 先のブラジルであろうが、当方には関係がない。

図で、青い矢印 は、メールの 「送信」 経路を示す。この送信に使われるのが、SMTP - Simple Mail Transfer Protocol - というプロトコルである; 「プロトコル」 とは 「送受信手順」 のこと、例えば Fax の 「ピー・ピロピロ (Fax 送りたいぞ)、ピロー・ピイロ・ピイロ (よおし、では送ってくれ)」 という音のシュプレヒコールと同じで、機械同士の 「送受信に際しての合言葉の羅列」 である。普通のメール・ソフトは、メール送信の際 まず メール・サーバに要求を出す。サーバは、それに応じて返事を返す。サーバからの返事が 「よし、では送ってよこせ」 と来たら、パソコンからは電文が出る。その電文は、メール・サーバ上に一時 保存される; 次に この (私の) メール・サーバは、指定された送り先が どこにあるかを、インターネット上で検索する; 送信先が発見されると、私のメール・サーバは、今度は 発見された相手側サーバに対するクライアントとして、同じ手順を取る; SMTPでは、電文 (メール、つまりデータ) の送り主を常にクライアントと呼び、受け取り主を常にサーバと呼ぶ。「私」 は私のサーバに対してクライアント、私のサーバは相手方に対してクライアントとなる。この伝送ごっこは、多いときは 10段、20段と重なることもあって、次々と世界中のサーバを駆けめぐった末に、最後に相手側メール・サーバに届くことになる。

さて、こうして相手側 末端メール・サーバにまで届いた電文つまりメール本体は、その末端サーバの上で一時的に留め置かれる。というのは、メールの受信者は個人であって、その個人から 「俺あてのメールは来ていないか」 と問合せが来るまでは、どこに送るわけにもいかないからだ。そこで登場するのが、赤い矢印 で描いた POP である。
POP という言葉が何の略語なのかは、僕も知らない。ちょうど WWW とは何ぞやみたいなもので いつの間にか一般化した。それも、1990年代には POP3 というバージョンになって、これが世界標準になったらしい。
メール本文は既に 受信者のサーバ上にある。ここまで来て なぜ急に SMTP ではない別のプロトコルを使うかというと、それは 「プロバイダ」 の都合である。1つのプロバイダには、少なくとも数千から数万の会員がいるだろう。その会員間のプライバシー、つまり他人あてのメールを互いに盗み見 できたり、錯誤で受信者を間違えたりすると、面倒なことになる。そこで考え出されたのが POP プロトコルである。そこでは、客側のパソコンから 「私は誰、私のパスワードは何、で、私あてのメールは来ていないか」 という通信が要求される。この 「私」 の名前と、プロバイダに事前に登録した私のパスワードが一致してはじめて、プロバイダ上のメール・サーバは 「私あて」 のメールを 私に送ってくれる。かくして、メールは指定された相手に 「のみ」 配信される。(SMTP ではデータの送信者を 「クライアント」 と呼ぶのに、POP では データの送信者を 「サーバ」 と呼ぶ。このあたりの 「言葉の都合」 は、極めて恣意的である)
注記: ここで重大なことに気がついてほしい。POP には、受信 (希望) 者の名前とパスワードが要求されているので、そのパスワードが盗まれない限り、受信については 私信が他人に盗まれることはない。
が、POP で 「わざわざ」 受信者の名前とパスワードを求めるということは、裏返せば、SMTP つまり 送信経路の大部分では、「誰が、何を、どこに」 送信しつつあるかは、誰もチェックしていない。言い換えると、SMTP では匿名のメール発信も可能だし、実は世に蔓延するウィルスたちのように、知らぬ他人の名前を発信者と 「語る」 ことさえできる。事実、僕から発信になっている 僕あてのウィルスは何度も来ているし、僕発 知人あてウィルスというのには、あわてた。こういうことがあると、互いに知識を欠いている場合、悪意のウィルスによって友情が破壊されるおそれさえある。(発信者名が僕になっているウィルスの受信者諸兄へ: それは、僕が発信しているのではありません。いま流れているウィルスは、インターネット上に公開されているメール・アドレスを無作為に取り出して、それらを発信者として語り、それらをまた受信者として 片端から送りつけているようなのです)
ともあれ、この項では 「メール (サーバ)」 一般、メールのプロトコルを説明した。だから、一般にメール・ソフトでは 送信手順として SMTP、受信手順として POP、この2つのプロトコルについて 「その相手になるサーバ」 名を教えてやらなければならない。この2つのプロトコル、それらを担当するソフトウェア (プログラム) は、たとえ1つのメール・ソフトの中でも それぞれ まったく別の部分だから、それぞれ個別に教えてやる必要がある。

裏返すと (「今まで説明してきたことの 裏返し」 の論理が、今後も しばしば登場するはずである)、この2つのプロトコルにそれぞれ別のサーバを当てることもできる。が、それは まだ説明する段階ではない。
その前に、次回は 「外国現地プロバイダと契約した場合」 の、この 左右 (日本側と現地側、どちらも 「わたし自身」 である場合) の、メール・サーバの関係を説明したい。その上で、中期〜長期化する外国滞在の場合を考えよう。

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(20040511-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (4) − 現地のプロバイダ

外国に出て数ヶ月もの間、近所にインターネット・カフェがあるのでもない、職場や学校で手軽にインターネット回線につなげるわけでもない、さりとて数ヶ月もメールなしでは生活そのものが成り立たない、という場合。
あるいは 職場や学校でインターネットにはつなげるが、夜間にこそ ゆっくりと宿所で通信したい、場合。

この場合、現地のプロバイダと契約する以外に 方法はなさそうだ。幸い、今となっては、最悪でも 「電話」 さえ通じる世界であれば、その 「国内」 のどこかにインターネット接続点がある。問題は インターネットへの接続の中でも 「電話」 は もっとも複雑で わかりにくいものの1つである点だが、そこは やむを得ない; そういう環境に みずから身を投じて、その地からインターネットを使いたいなら、そこで もう一ふんばり、がんばってもらうしかない。韓国などの場合、自分の電話を持つと同時に ADSL も開通させてしまえるだろう。台湾も、都市部なら多くそうなっているはず。が、その他の ほとんどの場合、ほとんどの地域で、アテになるのは旧来のアナログ電話だけ、の可能性が高い。
(なお、ADSL や光通信が期待できる世界では、日本でルーター (という機械。流行の 「無線」 のない時価 数千円のものとケーブル) を買って持って行けば、そのまま使える可能性が非常に高い。ルーターと外部とをつなぐ PPPoE と言われる通信手順は 国際標準であり、日本に固有のものではないので。なお セキュリティ つまり ウィルス対策と ルーターの関係については 昨年9月の一連の記事 を参照されたい。高速回線に (firewall として) ルーターを使わないのは 危険にすぎる)
たとえアナログ電話だけ、従ってどんなに速くても 40Kbps 程度の速度しか得られなくても、それでも 「インターネットにつながっている」 のは事実だ。1MB のダウンロードにたとえ5分かかっても、それでも 「世界の中で」 孤立しているのではない。ただ、インターネット上の ストリーム映像、例えば映像付きニュース番組などは それでは無理なので、それはそれで あきらめる。

この 「現地でのプロバイダ」 によって、パソコンは 「インターネットにつながる」。自動的に、どこであれ Web メールにつなげられる。Web メールの強みは、インターネット・カフェでも使える点だから、それを自宅で (留学先の宿所で) 使うなという法もない。

しかし、プロバイダ契約をすれば、やはりそのプロバイダを拠点サーバとする メール・アカウントが付いてくるにちがいない。さて、それを どう使うか。行った先のその地で今後 数年以上 暮らすなら、あるいは 10年、20年そこで暮らす可能性も含めて、日本側のメール・アドレスは順次 解消して行けばよい。が、今のテーマは、「いずれ日本に帰る。それまでの間、メールをどうするか」 だった。

次回 まず、この 「現地プロバイダでのメール・アドレスと、日本での本来のプロバイダのメール・アドレス」 の関係を、図を使って説明する。この関係は 一面 (3) Web メールへの転送と同じようにも使えるが、逆に 「一方だけ使う、そのための現地プロバイダ契約だ」 という使い方もできる。Web メールとのちがいは、日本側も現地側も、どちらも同じ 「古典的なメール・ソフト」 を使う点である。要するに 「私のメール、どこにつないだらいいの?」。この問題には、実はあっと驚くような解決方法もある; その点だけは期待してくださってもよいが、プロバイダにもよるので、ま、次回に。

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(20040510-1) 外国に出たとき、メールをどうするか (1)

実は、懸案の話題で、数人の先輩、恩師その他のために まとめておく必要があった。放置してきたのは、「話が面倒である」 こと、つまり 「頭の体操」 になる点を含むので、書くほうも面倒だったからである。が、そろそろ まとめよう。

以下、想定する読者は
1) 生活の根拠地が日本にあり
2) 日本に契約プロバイダがあって それをメール交換の拠点としているが、
3) ある期間 外国に出ることがある。
4) が、その間のメールの送受信に困難を感じる人
である。1) は、日本に留学している外国人は 以下 「日本、国内」 を 「本国」 に、「外国」 を 「日本」 に読み替えてください。3) 「ある期間」 とは、数日から数年の間を想定して、両面から考えることにする。


(20040510-2) 外国に出たとき、メールをどうするか (2) − 「ローミング・サービス」

僕の周辺はまじめな人が多いので、プロバイダ契約の際に その契約、サービスの内容をよく調べている。その中に 「ローミング・サービス」 がある。これは、「当プロバイダと契約しているお客様は、外国に出ても その外国現地から、その国内の当社の接続先に電話してください。日本で当社に接続するのとまったく同じサービスを提供しております」 というやつである。

これには、いくつか障碍になるものがある。

第1に、ローミング・サービスの多くは、国内の主契約とは別の、別料金である。この 「別料金」 は けっこう高くて、例えば1分 20円も取るところもある。

第2に、外国での接続用 電話口を用意するといっても、その数には制限がある。現実問題として ローミング・サービスが実用になるのは、アメリカ東西海岸の数都市、アジアでは韓国、台湾、上海、香港など 「首都」 級の都市だけ、と言ってよいはずである。もちろん、業者 − 例えば USA 系の AT&T − によっては、世界の数十ヶ国にローミング・サービスの電話口を用意しているところもあるが、それでも 「数十ヶ国」 の各国に1ヵ所程度で、ましてインド、パキスタン、旧ソ連圏を経て北欧に至るまでの間は 「数ヶ国に1ヵ所」 がいいところ。ローミング・サービスの相手に国際電話ではラチがあかないし、それ以前に電話回線が遠ければ 通信の速度も品質も落ちて行く。かつては、韓国から わざわざ日本のプロバイダに国際電話する人がいたが、これも今では現実的と思えない。

第3に、国外に出て たった一人で この 「ローミング・サービス」 先に接続しなければならないのは、慣れない人にはつらい。僕自身 電話モデムは過去 10年以上 使っていないし、電話をかけてみたはいいが 「まったくつながらない」 なんてことになると、これはたまらない。「日本の中でさえ、里帰りすれば そこでパソコンの電話先の設定は変えなければいけない。まして外国に行ったら そんなの当たり前だ」 と 父を叱った息子がいるそうだが、そう、電話接続そのものが、慣れない人には非常に困難なのだ。

というわけで、「ローミング・サービス」 は お勧めしない。インドの北、中国の西のほうから、日本のプロバイダにつなぐために北海沿岸まで国際電話することは、ない。
冷たいようで恐縮だが、「ローミング・サービス」 は 世界の中でも 「先進国」 の、そのまた首都級の都市でなければ 現実の役に立たない。それ以外の場所では、短期の滞在なら、やはり現地のインターネット・カフェでも使うしかない − ことになる。


(20040510-3) 外国に出たとき、メールをどうするか (3) − Web メール

上の 「現地のインターネット・カフェ」 というのは、そこで Web メールを使うことを想定している。Web メールとは何ぞや − これは省略するが、要するに 「インターネット・ブラウザ」 で、ある 「ホーム・ページ」 を見ると、あなたは誰、パスワードは? と聞いてくるので、それに答えると、「私」 のメール専用ページが開く 「あれ」 である。有名なところでは Microsoftが無料でやっている www.hotmail.com 、まったく同じように www.yahoo.co.jp でも www.yahoo.com にも この Web 「無料」 メール・サービスがある。これらは完全にタダである。ただし 保存メールの 「量」 に制限があるが、その制限も ごく普通のプロバイダの (本当の) メール・サービスの制限と似たりよったりで、事実上 機能が劣ることはない。むしろ、不親切なプロバイダが平気でウィルスを配信して来るのに対して、Web メールでは まず間違いなくウィルスは排除してくれるから、その意味では Webメールのほうが よほど安心だったりもする。

さて、Web メールは、「既にそこがインターネットにつながっている」 ことが前提である。だから、外国の田舎に短期滞在する場合、「田舎」 であってもインターネット・カフェが存在する程度のところなら (つまり、その街までインターネットがつながっていれば)、そのパソコンのあるところまで行けば、必ず Web メールは使える。その意味では特に Microsoft 提供の hotmail は圧倒的に強い; つまり、Windows が存在するところであれば必ず Microsoftのサイトに接続できるので、必ず hotmail にもアクセスできる。(ご参考までに、我が家に来るサンタさんのメール・アドレスも www.hotmail.com にあり、このサイトは どこなのか不明な北欧語で まず トップ・メニューが出る。どうもフィンランドかラトビアあたりらしいのだが、詳しくは調べていないのでわからない)。
(蛇足だが、インターネット・カフェで Web メールを使うときは、「前の人のアドレス、パスワード」 などが見えないかどうか、注意されたい。もし前に使った人のそれが見えたら、「私」 のそれも次の人に見える。こういう場合は、使った後、「私」 が使った痕跡を完全に消してしまわないと 後の客に悪用されるおそれがある。これは この記事の守備範囲を越えるので今は書かない)

短期で外国滞在する場合に、Web メールで自分あてメールを見る/発信する

この場合、日本を出る前に hotmail など (以下、面倒なので 「Webメール」 で一括する) に自分のアカウントを作っておく。その際、ある程度の個人情報 (名前、住所、電話など) を要求されるのは やむを得ない (そもそも プロバイダとの契約でも その程度の個人情報は出したはずである。3流の怪しげな Webメール・サイトならともかく、名前の通った Webメール・サイトには、その程度は教えざるを得ないと考えることにする)。もちろん Web メールだから、アカウントの作成自体は現地のその場でも できる。が、それでは 「事前に そのアドレスへの転送」 準備や、その実験ができない (それが必要なければ、現地の現場でアカウント作成でもかまわない)。念のため、日本を出る前のアカウント作成は 別にインターネット・カフェに行く必要はない; あなたの 「その」 機械でやればよろしい。例: www.hotmail.com

これで、Web メールのアカウントができた。
次に、あなた自身のプロバイダの ページを見る。その中に、必ずあると思う: 「私あてのメールを他のアドレスに転送する」 サービス。このサービスには、常識的に2つの選択肢があるはずで、
(1) 「転送してしまう。転送したら当プロバイダ上からは消す」: この場合、すべてのメールは その転送先に行ってしまい、行ったら最後 現在のメール・ソフトでは二度と読めない。
(2) 「転送する。転送するが、そのメールは当プロバイダ上にも残しておく」: この場合、「私」 あてのメールは 今まで通りのメール・ソフトで読める。ただし 同じものが Web メールにも転送されているので、その転送先でも読んでやらないと、Web メール側がパンクする。一方、出かけた先で Web メールを使っている間にも、本来の (国内の) プロバイダの上には同じメールが溜まってくる。これが プロバイダでの制限量を越えると それ以上 受信できなくなるので、その点に注意; つまり、短期の外国行きなら (2) で 帰国後 まとめて自分自身のメール・ソフトで整理する; 外国にいる間は Web メールで 「臨時に」 見る/返信するだけにする。
外国滞在が ある程度長くなる場合には、(1) 「転送しっぱなし、プロバイダ上からは消す」 を取る。

「さて、Web メールは、「既にそこがインターネットにつながっている」 ことが前提である」。現地に出かけて、近所にインターネット・カフェがあれば 短期間ならそれですむ。近所にない場合、「短期間はメールの手段なし」 も仕方がない。滞在が長期化する場合、あるいは中期的つまり数ヶ月以上になる場合には、現地で、現地のプロバイダと契約をする必要が出てくる。条件が良ければ − 例えば都市の大学構内、研究機関、あるいは企業内でインターネットが使えれば − 自前のプロバイダ契約せずにすむ。が、それでも夜中に自宅のパソコンで通信したい場合がある。すると、やはり現地のプロバイダになる。

その場合、では 「現地のプロバイダ」 でのメール・アカウントを使うか、それとも職場や自宅で Web メールを使うか、あるいは 現地で自分のパソコンから、日本側プロバイダに直接アクセスするか/できるか − ローミング・サービスは既に 「勧めない」 と書いた − といった問題が出て来る。ここから先、「頭の体操」 がはじまる。どう説明を展開するか、今夜は考えながら ここまでにする。

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(20040506-1) 80前の老人のためのパソコン

毎度ばかばかしい お話で恐縮 − とはいえ、「年老いた父」 を持つ方は多いはずなので、書いておこう。

彼より先に 「ワープロ」 の寿命がやってきて、彼が筆記用具を失ったことは前にも書いた。その後。
世の裕福な老人ならともかく、年金でやっと暮らしている親だから、例えば僕の息子に家紋入り鯉のぼりを買ってやろうなどとは言い出さない (言い出されると面倒だが、幸か不幸か 彼にそのカネはない)。それより、「ワープロ」 の代替機がほしいようである。今となっては パソコンしかないが、ノート型ではどうしても ¥10万は見ておく必要がある。バブル機の 「ワープロ」 の2倍の値段は、高額にすぎる。

思い出したのは、僕の遊休マシンだ。Cylix 3、550MHz。原則 「Fan-less」 で 24時間稼動をはじめた最初の機種、HDD はノート用 2.5" を使う。FD も CD-ROM もない (Windows それ自体のインストールには、臨時に CD-ROM をつないだ)。Fan-less つまり 「冷却ファンなし」 は実際には不可能だった (夏には熱暴走した) ので、背後の PCI スロットのフタに孔を開けて排気するタイプのファンを付けた。
これを使えば、新規購入は モニターとプリンタだけですむ。キーボード、マウスは遊んでいる。インターネットまたはメールは − LAN コネクタまでは付いているので、電話モデムを体験させずにすむ (手持ちの電話モデムは 14400 があるだけだ)。問題は、現在の IP 電話を解消して 再度 NTT アナログ+ADSL とさせるか、それとも IP 電話本体のケーブルに相乗りするか; そのあたりが、僕が当事者ではないのがもどかしい。が、当面インターネットなしでも、ワープロ代わりにはなりそうだ。550MHz, 2.5" HDD となると 今となってはマシン起動そのものが遅いが、そこで彼の意外な発言: 「(機械の電気は) 入れっ放しじゃいかんのか」。ふうむ。彼らしくない発言だ。過去 70年、あれほど神経質に 「外出時は電気を切りまくる」 をくりかえしてきた老人の発言とも思えない。が、それはいい。神経質な彼も、さすがに 冷蔵庫や Fax 受信機 (電話機) の電源まで切って外出はしない。つまり、パソコン (ワープロ) がその種の機械に属するなら、それで結構なことである。

この Cylix 550MHz には、因縁がある。熱暴走はともかく、2年?前、今の僕の機械に この CPUと メモリを使おうと思ったら 動かなかった。おかげで、僕の機械は Celeron 1G になった。Cylix は遊んでいた。

久しぶりに電気を入れてみようと思っている間に、夫婦喧嘩?をして僕がヒステリーを起こした。機械ごと床に投げ出した。翌日、通電した。まったく動かない。ビープ音さえ出ない。メモリの差し忘れなら ピーピー言うはずだ。まったく無音、ただし HDD と スロット・ファンは回転する。こりゃ、基盤が割れたかな (つまりパターンの断線か)、電源基盤が割れたか? たしかに、電源系のコネクタが ずいぶん甘く (ゆるく) なっている。ほぼ、あきらめた。が、ものは試しに、2年前 差し戻したまま通電していなかった CPU を、外してみた。再度 付ける − おう、動くじゃないか!

それからが大変。2年分の Windows Update。ダウンロードは ADSL でも、そのダウンロード先 2.5" HDD が遅い。さらに その 「インストール」 の遅さが、この CPU の実力である。
余計なソフトの UnInstall。外国語入力は 朝鮮語も中国語も何もいらない。ほぼ処女状態のパソコンに見える姿に戻して、次は Word を乗せる。この Word 自身も Update が必要だが、今夜はやめた。この週末までかかるだろう。

さて、この パソコン、80前の父のもとに嫁ぐのは いつになるだろう。そして、かつて僕が乗せた様々なソフト、例えばプリンタやスキャナのドライバとおまけソフトたちを、彼が自分で乗せるのは いつになることか。ましてインターネット・ブラウザのさまざまな Plug-In を自分で更新できるようになるまで、彼は生きてくれるや否や。インターネットにさえつなげば、TBS や フジTV の Real の ニュースは即 見れるようにはなっているのだが、その 「インターネット」 へのつなぎ方、業者/回線の選択、それらとの交渉、切替が、また大変なのだ。

なお、キーボードは PS/2、マウスは光センサ型を USB で (電源外付けではない)「バカ HUB」 につなぎ、このバカ HUB にプリンタもつなぐことになる。シリアル、パラレルのコネクタは、今後 機械の生涯に渡って使われることはないだろう。
キーボードは、ユーザへのインタビューから 英文キーボードで充分であることがわかった (つまり、彼はローマ字入力していたらしい)。ただし 小型のキーボードは老人には不適当なので、日本語 106 Compaq 純製と、クリック音のする英文版しかない。どちらを取るかは、ユーザに選ばせるつもり。
この他、スピーカーが要る。手持ちに、適当なものがない。1つしかない USB コネクタと バカ HUB の間の (ごく短い) ケーブルも 僕のヒステリー前後に失われたので、これも買って来る必要がある。結局 必要なのは モニター、プリンタ、スピーカー、ケーブル。ユーザには どうしても ¥4万以上の負担となる。USB の先に CD-ROM だの DVD だの ・・・ と言いはじめたら、その時はパソコン本体の買い替えだろう。ただし、彼の生存中にそこに至るかどうかは、未知数で、ある。

おまけ: Cylix 3、略して C3 では、最新の Linux kernel が上がらない (!)。連休前にそれがわかって、水野さんではラチがあかん、他の人に頼もうという話が出た。ちょっと自尊心に関わる?事件だったが、たしかに僕は 「その上でのアプリ」 に責任があるが、Linux 本体は お手上げである。もっとも 「他の人」 も やや難渋した様子で、「とにかくやってみる」 ということになったらしい。
僕は、その C3 を、80前の老人を嫁入り先として、Windows で出してしまおうと考えている。


(20040505-1) 「鯉のぼり」、その 「補修」 に関するウンチク

4日、ひどい風が吹いたので、ベランダに掲げた鯉のぼりセットが心配になった。帰ってみると、とりあえず無事。ただし、マンション ベランダ面を吹き上げる乱流は相当に強かったようで、最長1mの4匹+吹流しセットの それぞれ しっぽに付けておいた洗濯ばさみ (軽い化繊の鯉たちは舞いすぎる; そこで、洗濯ばさみを 「重り (おもり)」 につけておいた) は、5つのうち4つまで消えていた。それでなくても、前日には 吹流しに入れたプラ板の芯は消えてなくなるわ、3本糸の1本は切れてしまうわで、5月5日まで 持つかどうかが危ぶまれた。

が、吹流しに関して言えば、1本が切れて2本糸になると、かえって無事だった。2本糸になることによって、「口 (くち)」 から流入する空気流がなくなる (風と平行になってしまうから); 従って 「糸」 の風に対する負担は かえって軽くなったのだった。

5月4日の夜、今夜は補修するとして、1晩は強風を避けて撤去するかと、一瞬 考えた。が、よく考えてみると、5月5日にこそ鯉のぼりはヘンポンと上がるべきものであって、我が家で5日早朝に再度 掲げるのは現実的でない (何しろ、僕自身の起床時間は昼近いのだ)。

4日の夜は、それで 「補修」 後 再度 掲げた。不安な部分の補修は、百円ショップで買った 「チャーシュー」 糸、「重り」 は事務用 金属製の紙ばさみに変えた。かくして、鯉のぼりは無事 5日の一日の間 耐えてくれた − そういえば、これは 「いつ」 撤去するべきなのだろう。選挙のポスターじゃないが、その日付を過ぎたら さっさと撤去するべきなのだろうか。今のところ、鯉のぼりは6日の午前にも 我が家のベランダに出ているはずである。

余談だが、¥7,500 とはいえ、鯉たちにはブランドもの化繊メーカーの名前が付いている。が、ほんの数日の間に、この軽い化繊の鯉たちは 既に しっぽに ほつれが見られる。店のおばちゃんたちが ブランドものだから 「洗えば」 何年でも使えると言ってはいたが、僕はそれを最初から信じていなかった。実際、今年のそれは 「父・母・子鯉」 のセットに対して 「お姉ちゃん」 鯉 を追加することがテーマ、または課題だったので、「数年使用」 は考えていない。おそらくこのセットは、3才ころのお姉ちゃんのそれと同様、僕の部屋で今後数年、その隣に掲げられることになるだろう。

最近は 街の 「鯉のぼり」 も、多くない。近所では保育園の他に、地元の旧家か成金か、家紋入りの吹流しのあるセットが掲げられているだけだ。そんな世界は どうでもよろしい。

なお、化繊の 「鯉」 の「口」 を支える3本の糸の補修 (取り替え) には、時計用ドライバ− つまり細いネジ回しが有効だった。太い専用 (業界) タコ糸用の針はいらない。既存の孔がない場合は 最細 1.0mm のマイナス ネジ回しでガイド孔を開け、次は いきなり 最太 3mm の プラスを通す。この 3mm で チャーシュー糸を強引に通してしまう。
この他 「時計用ドライバ−」 のセットは、ピン・バイスなどない時、特に細い マイナス・ドライバ−がその代用になる。もちろん道具は傷むが、今では 「時計用ドライバ−」 だって百円ショップで売っている。


(20040503-1) 現状報告 − 連休は子守り

ったくもう、子守りは子守りは子守りは子守りは ・・・

なお、英語で (コンピュータのソフトのバグは)
Bug is bug is bug is bug is . . .
と言う。


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