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菅野裕臣
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本書の構成 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1.朝鮮語の分布と使用人口 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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英語、中国語、インド諸語、アラビア語、スペイン語、インドネシア語、日本語、ロシア語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、イタリア語
ウクライナ語、ポーランド語、ヴェトナム語、タイ語、ビルマ語、ペルシャ語
注記:
ソ連は1991年解体し,朝鮮人(高麗人)はウズベキスタン ( <- ウズベク共和国),カザクスタン ( <- カザフ共和国) を中心にクルグスタン,ロシア連邦 (サハリン州その他),ウクライナ等の各地に散在している.
1995年の韓国統一院の統計によれば朝鮮人の人口は次の如くである.
朝鮮語の使用人口はそれを下回ると思われるが,正確には分からない.特に日本と旧ソ連での朝鮮語母語話者は極度に少ないと思われる.
大韓民国 4,485万 朝鮮民主主義人民共和国 2,295万 中国 194万 日本 69万 旧ソ連 46万 アメリカ 180万 カナダ 7万
3.文字の成立 | 15世紀中葉。漢字ともエジプト文字とも起源を同じくしない独特な文字。人工的な文字。 |
文字の名称の変遷 訓民正音、正音、諺文 ・・・ 15世紀 国文 ・・・ 甲午更張直後 (ハングル) ・・・ 周時經 -> 韓国 (チョソングル) ・・・ 北朝鮮
注記: 「諺文」 は日本では 「おんもん」 と読まれてきた.なお 「諺解」 (朝鮮語訳) は 「げんかい」 と言われる (オンカイではないから注意!).
1912年 朝鮮総督府 「普通学校諺文綴字法」 京城語を標準とする。 1933年 朝鮮語学会が総督府とは関係なしに 「 (朝鮮語綴字法統一案)」 を作成。中流社会で用いられるソウル語を標準語とする。 1936年 「 」 朝鮮学会、標準語9,547語を決定する。
フランスのアカデミーと同じ方式。標準語査定委員会が投票でひとつひとつ単語を決定する。1940年 朝鮮語学会 「外来語表記法統一案」発表。 1940年代 創氏改名。朝鮮語の使用禁止。 1945年 朝鮮解放。南北朝鮮ともに 1933年の 「 」 を援用。 1948年 大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国成立。
韓国は「ハングル専用に関する法律」を公布 (ただし実際は漢字を使用)。北朝鮮 「朝鮮語綴字法」 公布。韓国との正書法上のちがいが出はじめる。1948年 2月 - 1949年 3月 北朝鮮 文盲退治運動。 1949年 北朝鮮 漢字廃止、横書き採用。 1951年 韓国 「常用一千漢字表」 発表。 1954年 北朝鮮 「朝鮮語綴字法」 公布。さらに韓国との正書法上での差がひろまる。 1957年 韓国文教部 「韓国制限漢字一覧表」(1,300字) 発表。 1958年 北朝鮮 文字改革案さかんとなる。 1959年 韓国文教部 「ハングルのローマ字表記法」(第1次) 発表。 1961年 韓国 漢字廃止論高まる。 1964年 1月 3日 北朝鮮、言語学者たちとの談話での金日成の教示 「 」。 1966年 5月14日 金日成の言語学者たちとの談話 「 」 「社会主義を建設しつつあるわれわれが、革命の首都である平壌のことばを基準として発展させたわれわれのことば」 を 『文化語』 と呼ぼう。漢字語の一掃作戦。 1966年 北朝鮮 「朝鮮語規範法」 公布。韓国との正書法上の差は若干縮まる。 1968年 北朝鮮 漢字教育開始 (3,000字)。 1970年代 韓国では公文書からの漢字の一掃をほぼ達成。 1972年 韓国文教部 「漢字教育用基礎漢字表」(1,800字) 発表。 1979年3月 韓国文教部 「 」 を作成したが、朴正煕政権の崩壊にともなって廃案。また正書法の改革も論議される。 注記: 1984年 韓国文教部 「国語ローマ字表記法」(第2次) 発表. 1988年 韓国文教部 「新ハングル正書法と標準語規定」 発表.
北朝鮮 国語査定委員会 「朝鮮語規範法」 発表.2000年 韓国文化観光部 「国語のローマ字表記法」(第3次)発表.
北朝鮮 「朝鮮語分かち書き規範」 発表.
南北朝鮮の正書法だけでなく、正音法 (orthoepy) および標準語自体が、だんだんと差を見せはじめている。
【ハングルは単音文字という点ではローマ字と同じだが、しかし音節ごとにまとめて書くという点で音節文字的側面を持つ。子音字と母音字が単独に書かれることがない点ではローマ字とは大きく異なり、むしろ音節文字の構成要素的性格が強いといえる。】・・・を黒板に大きく書き、その書き順、配分等を説明しつつ、かつ子音字と母音字の関係を説明する。文字ひとつひとつを発音し、また学生たちにコーラス・リーディングさせる。 []、 [u]、 [] などの母音を含む文字は数人の学生に言わせてみて直してやる。
【発音記号とは便宜的なものだから、本来何を使ってもよいものである。甚だしくは日本のかなでさえ発音記号として使用しうる。日本・韓国・北朝鮮・中国の英語教育では、普通 IPA (International Phonetic Assotiation 国際音声学協会) の記号を使うから、本書でも便宜上これに近いものを用いるが、一部は実用を考慮してわざわざかえてある。】母音字の構成について説明する (と 、上下・左右に一つあるいは二つの棒を書く。一つの場合は直音、二つの場合は拗音)。
単語は次のようにして練習するようにと指示する。(教室でやらないでよい)
だけ , (平唇) と ,, ( 〃 ) と ,, ( 〃 ) , ,,,, (円唇) ,, と ,,,, (平唇+円唇) , と ,, (円唇+平唇) ( 円唇+平唇+円唇 ) ( 口を大きく開ける + 口を横に引く + [i] )
注記: 1989年の韓国での正書法と標準語の改定により 単語 は と改定された.この結果この単語に関しては南北の違いがなくなった.
1.ハングル以外の部分をかくして、ハングルを読んでみる単語はあくまでも一字一字ひろいよみしないで、全体でさっと読めるようになるまで練習する。
2.ハングルの部分をかくして、ハングルを書いてみる
3.テープの生の発音を聞いて、ハングルで書いてみる
4.余力があれば、各単語の意味を覚える (無理しないでよい)
注記: 1988年の韓国の新正書法で外来語の表記に際して従来書かれてきた , , , という文字を追放したのは 正しくこの理由による ( だけが用言の第 III 語基で用いられる)。,,, は [tja],[tj],[tjo],[tju] よりも、[tija],[tij],[tijo],[tiju] のように発音するかもしれないが、これらは外来語にしかあらわれない音であるから、あまり重要ではなく、聞こえたように発音してかまわない。
は日本語を通して入った外来語。p.22の下の単語について
は漢字語。漢字語はこのように日本語と似た音のものが多い。
(円唇+平唇+[i]) のような単語の発音は特にむずかしいから何度も練習させる。
[k],[t],[p],[t] が語中で有声化することを教える (厳密にいえば、日本語の有声音よりは有声化の程度が弱いが、そこまで言及しないでよい)。
【朝鮮語は、[k] と [g],[t] と [d],[p] と [b],[t] と [d] との違いが意味的対立を引き起こさない。極端なことをいえば、 は [kogi] だけでなく、[koki],[gogi],[goki] といっても、発音がおかしくはあっても 「肉」 以外の意味を持つことはない。それは、[nara] を [nara],[nara],[nara],[nara] のいずれに発音しても、「国」 以外の意味を持ちえないのと同じである。すなわち、朝鮮語においては、日本語と違って、有声音と無声音の対立は 音韻論的に 意味がなく (irrelevant)、[k] と [g],[t] と [d],[p] と [b],[t] と [d] とはそれぞれ同じ 音素 (phoneme) に属し、それ故、朝鮮人には有声音と無声音のちがいは一般には聞きわけができず、同じ音であると認識しているが故に、文字でも区別しないのである。有声音と無声音のちがいに関する限り、日本人は朝鮮人より耳が敏感である。関東大震災の朝鮮人虐殺の際、「学校」 と言わせて、「カッコー」 と発音したものを朝鮮人と見なしたのは、まさに朝鮮語の特徴を逆利用したものである。朝鮮語では、音素 “” は語頭で [k],語中で [g] という音声 (sound, phone) であらわれるという習慣があるのである。音は言語ごとに習慣が異なる。】§4の子音とは違って、§3の子音は語頭と語中で音の異ならないものである。ここまでの子音は日本人にとってさほど難しくない。
注記: と , と , と , と とがそれぞれ発音が同じであることは と , と , と , と との場合と全く同じ.1988年の韓国の正書法では だけが用言の第 III 語基で用いられ,事実上 , , は外来語の表記だけでなく正書法一般から追放された.
【
有声音:無声音 日本人は敏感 (日本語に音韻論的対立がある) 朝鮮人は鈍感 (朝鮮語に音韻論的対立がない) 平音:激音:濃音 日本人は鈍感 (日本語に音韻論的対立がない) 朝鮮人は敏感 (朝鮮語に音韻論的対立がある) 言いかえれば: は 「コギ」、「コキ」、「ゴギ」、「ゴキ」 いずれでもよい (ただし 「コギ」 以外はやはりおかしく聞こえる)。
カク (書く) は [kaku],,,,,, 等々どれでもよい (ただし [kaku] 以外はやはりおかしく聞こえる)。】
【朝鮮人よりも日本人に有利な点は、有声音と無声音の聞きわけ程度で、その他の面では、ことごとく日本人の方が不利である。すなわち朝鮮人が日本語を学ぶ方が、日本人が朝鮮語を学ぶよりも、すくなくとも、発音の面ではやさしいといえる。】音節の頭の子音は、§6までに全部出つくした。
§7. 終声(1) | 漢字語: ,,,, | |
ここで音声と音素の区別に加えて、音素と文字の違いも把握させる必要がある。
CCCVCC /straiks/ strikes (英語) CCCCV− /vzgl'at/ взгляд <観点> (ロシア語) −VCCCC /gasudarstf/ государств <国家> (複数属格) (ロシア語) CVC /gwa/ gung <光> (中国語)
これと同じことが朝鮮語にもあり、文字 , はそれぞれ位置により対応する音素が異なる。
ごうく /gooku/ [go:k] 《業苦》 ごおく /go'oku/ [gook] 《五億》 とおい /tooi/ [to:i] 《遠い》
ねえさん /neesaN/ [ne:saN] 《姉さん》 ねいしん /neisiN/ [ne:siN] 《佞臣》 ねいき /ne'iki/ [neiki] 《寝息》
はなじる /hanaziru/ [hanadir] 《鼻汁》 はなぢ /hanazi/ [hanadi] 《鼻血》
はなずもう /hanazumoo/ [hanadzmo:] 《花相撲》 はなづくし /hanazukusi/ [hanadzki] 《花尽くし》
文字 初声 終声
ここで音素という概念は難しいから、当分、音素=音声という把握でもよろしい
[s] [t] []
【ただし次の音的差異は、音素の違いだけでなく、同じ音素の変種 (異音 allophone ) である。唇音・歯音・軟口蓋などの術語は敢て教えなくてもよい。つまり、基本的にハングルは音素文字ということができるが、徹底したものではない (文字 の場合)。しかしながら、文字 (初声 [s]、終声 [t]) は、音素の交替 /s/〜/d/ を具現したものであり、このかぎりにおいて、これは 形態音素表記 である。】
文字 初声 終声 音素 [p], [b] [p] /b/ [t], [d] [t] /d/ [k], [g] [k] /g/ [r] [l] /r/ (英語と異なり [r] と [l] とは朝鮮語では同じ音素に属する)
【終声 [t] (音素 /d/) を末音とする名詞はかならず /s/ と交替する (終声 [t] (音素 /d/) を末音とする名詞で /s/ と交替しないものは現代朝鮮語には1語も存在しない)。それ故、§7で終声字 を出した。 のようなものは例外で、これは副詞である。】
【本書では、音声としての初声・終声と 文字としての初声字・終声字とを敢て区別しなかったが、教師はこのちがいをよく把握しておかなければならない。例えば、終声字 は、音素 /d/ に該当する。終声字 は、音素 // に該当する。音素 /r/ は、初声で [r]、終声で [l] となる、etc, etc。】終声 [p], [t], [k] は、広東語・福建語・ヴェトナム語・チベット語などの音節末の子音と特徴が似ているが、ただしそれらとはちがって喉頭の緊張があるようである。
次のように終声に番号をつけ、学生に番号であてさせる練習もする。
, ; , ; , , , ; , , , , ; , , , , ; , , , , ; , ,
(1) (2) (3) (4) (5) (6)母音を でなく、 にかえてもよい。
しかし、このように教えることは極めて困難であり、学生が混乱をきたす可能性があるため、<雪>の場合、無条件に常に [nu:n] と発音すると教えることとする。
意味 単独 〜 〜 〜
〈目〉 [nun] [nuni] [nunn] [nunl] 〈雪〉 [nu:n] [nu:ni] [nu:nn] [nu:nl]
_ | ||||
漢字語: | , | , | , |
注記: 現在 若い世代のみならず中年の人々の大部分が ソウルであらゆる場合に短母音と長母音とを区別していない,すなわち 概して長母音を短母音と同じく短く発音し,また一見両者を区別しているように見えて実際には区別があいまいであること が多い (例えば韓国のアナウンサーの発音も,この点で発音辞典を見て発音しているらしいが,誤りが多い).韓国の新しい正書法に付された正音法では長母音を認めているかのようだが (他方北朝鮮の正音法では長母音への言及がなく,かつ北朝鮮のある音声学の本によれば一般に長母音の存在を認める必要がないと書いている),老人たちの言語にまだ短母音と長母音の区別が残っており,なおも韓国の多くの辞典に長母音が記されているとはいえ,「言語の将来は若者に属する」のであるからには,もはや朝鮮語でその区別は,一部の方言を除いて,認めなくてよいと思われるので,日本の学生たちにはそれを敢えて教える必要はないと言える.従って本書で長母音を示す記号  ̄ は一切無視するように学生に伝える必要がある.
日本語のはねる音ン (/N/) は、鼻音性 (nasality) という特徴を持った特殊な音素で、それは条件に応じてさまざまな音声であらわれる。
◎
+,,, … ン+パ行,バ行,マ行 +,,,;,, … ン+タ行,ダ行,ナ行,チャ行,ジャ行 +,, … ン+カ行,ガ行
これらのンは日本人の耳にはちがいが感じられない (同一音素に属するから) が、朝鮮人の耳には少なくとも ,, の3つのいずれかで聞こえる。すなわち、日本語の場合とちがって、朝鮮語の終声 ,, は、異なる3つの音素である。従って、欧米語を学んだことのない日本人には上記 ◎ の部分のように教えるしかないのである。
(朝鮮人に聞こえる音) パン [paN] パン+と,だ,の [pan+] パン+ばかり,も,まで [pam+] パン+から,が [pa+] パン+は [pa+] [], [], [], []
などは鼻母音パン+や,やら,よ,より [pa+] パン+を [pa+] パン+へ [pa+] パン+さえ [pa+]
まとめてみると次のようになる。
+ ,,, + ,,,;,, + ,,, + ,, + ,
上記の × の場合、その場合の , を充分にひびかせてから次の子音に移行する練習をするとよい。
初声
終声, , , , , , ; , , , , , ○ △ △ △ / × ○ × × / × × △ ○ / △ △ △ △ △
○ … 日本人に発音可能
× … 日本人に発音不可能
△ … 日本人に比較的楽に発音できるもの
/ … ありえない子音結合
漢字語: | , , , , , , , , , , , , , , , , , |
注記: 現在ソウルでは 日常の発音で +,,, で は に,+,, で は に,+, で は に変わる場合が多いようである (ただしこれらの位置で韓国人はだれもが終声の ,, を区別して発音も出来るし,聞き分けも出来る).こういうことを勘案して +,,,; +,,,;,, の場合だけ厳しく指導し,残りについてはあまりうるさく言わなくてもよいと思う (多くのことをうるさく言ってもほとんど効果がないからである).この場合終声の をわざと長めに発音し,かつこの際唇が閉じてもいず,舌先が上の歯茎についてもいないことを確認し,それを充分響かせた後で,次の初声の発音に移ることが必要である.
§10.合成母音字 | (名詞だけでなく、副詞・用言などの例を出す) |
注記: 現在 ソウルの若い世代のみならず 中年の世代でも あらゆる場合に /e/ と // の区別が失われているので,両者の区別については神経質になる必要のないことを学生に告げるべきである.もはや韓国人の教師とて実際に両者の区別は出来ないのだから,両者の発音のテストを学生に課すことは意味がないというべきである.この後、p.31の表を見ながら、,,; ,,; ,,; ,, のように発音練習する。
注記: 現在ソウルでは ,, の3者とも実質的に [we] と発音され,韓国人による3者のつづりの間違いが著しい.次に [wi] に行く。 もいろいろのヴァリアントがあるが、日本人にあれこれ説明すると混乱するだけだから、簡単に [wi] と教える。
注記: しかしながら学生にあまり負担を与えないためには 「 は,正音法の指示する通りに,あらゆる場合に [je] と発音される」と教えて構わない.の発音は極めて問題だが、語頭で [i]、その他で [i] のように簡単に教える。[] のような音は教えないほうがよい。
注記: しかしながら学生にあまり負担を与えないためには 「 は常に [i],子音+ の場合は [i] 」 と教えた方がよい.p.34に体言語尾 (属格) の - は [e] と記したが、勿論字面を朝鮮人に読ませるとその場合でも [i] と読み、また学校教育ではそのように教えているといったことを学生たちに伝えてよい。ただし、- を [i] と読むのは、読音でしかないのであって (literary reading)、やはり本来の音は [e] であるといった方がよい。
【このような literary reading の例は日本語にもある。例えば、「せんせい (先生)」 は普通 [sese:] /seNsee/ と発音されるが、文章を読む時に 時折 /seNsei/ のように言うことがある。またロシア語でアクセントのない o を文字通り [o] と読む例など。e.g. города /garad/ [gr|da] <cities>,ただし literary readingでは [goro|da] のように。】以上で母音字のすべての結合およびすべての母音音素が出つくした。
漢字語: | , , , , , , *, , , , , , , , , , , , *, , |
* のついた単語は、北朝鮮で表記の異なるものである。−, −, − (p.283の§10参照)
【 という文字は多く漢字語にあらわれる。 という文字はほとんど漢字音にあらわれる (漢字音 は北朝鮮では発音どおり と書かれる)。 も漢字音であることが多い。】
朝鮮の文字は製作者と製作の原理がほぼわかっており、しかも既製の文字とも直接の起源の関係を持たないという点で、世界の文字において、また世界の文字史上極めて特異な位置を占めている。朝鮮人がこの文字をいわば朝鮮文化そのものとしてほこりに思うのももっともとうなづける。
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牙音−喉音という術語は、中国音韻学の伝統的術語で、学生が一々おぼえる必要はない。牙・舌・唇・歯・喉の順序は、古代インドの音声学における順序にもとづくもので、日本の50音図の行 (アイウエオ) と段 (アカサタナハマヤラワ) の順序も、それにもとづいて成立したものだから、ハングルの子音の順序と日本の50音図の段の順序とは類似点がある。
画像: 小学館 『名探偵コナン大事典』 1999, p.234
画像: 集英社 imidas 1991
画像: 集英社 imidas 1991[k]を発音する際 奥舌が口蓋に ついているさま 舌先が歯ぐきに ついているさま 唇を前から見たところ 歯の形.本当にこの部分をかたどったものかは明確でない のどの形.口を開けた時の形か?
練習1 次の対立に着目させる。
ア カ サ タ ナ ハ* マ ヤ ラ ワ * 上代日本語では *p → *Φ → h
初声 平音−濃音−激音 −− 平音−濃音 −, −, −, − 平音−激音 −, −, −, − 母音 − −, −, −, −, −, − − − − − 終声 − ( の前) − * − ( の前) − ** − (上記以外) −, − * ソウルでは は普通 と同じく発音され得るが,しかし − と − とは聞き分けが可能だから, はやはり文字通り − と発音させる.
** 慶尚道では は と同じに発音されるが,標準語では と は区別される.
注記: これらのペアのうち 母音に関しては17の前項が,第1字の終声に関しては18,19,21の前項が 現在実質的にそれぞれの後項と同じ発音となっているので (とはいえ韓国人はそれらを区別することが完全に可能であるが),それらの違いについては神経質になる必要がない.20の前項と後項の第2字の終声は厳密に区別する必要がある.
§12. 反切表 | (§1〜§6で学んだ子音の字母の順序を再整理するのが目的) |
また解放前は書堂などでは例えば次のように教えていた。
,,,,反切表には、濃音および合成母音字は含まれない。
,,,,
etc. etc.
注記: 子音字14個を7つずつに区切りというのは 日本の韻律に従ったものであり,朝鮮の韻律に従えば,4+4となるから, | | | のように最後が寸詰まりになる.
i) | . | 朝鮮語と日本語とはこのように対応し、語順は両者ともにほぼ同じである。 | |||||||||
これ | は | 牛 | だ。 |
[it] [n] [so] [ta]このうち は §4でやったように、[soda] と発音させる。 は [it n] ではなく、[isn] と発音される。§15の標題のように、母音の前の終声は初声のように発音されるという原則によって、 の は母音の前、すなわち文字 の前で、[s] と発音されるのである。すなわち
のように。
[ ]
.も上記と同じ。
.
ii) | . | + が [iida] と発音されるのは、+ の場合と同じ。 |
,,+ N(名詞・母音語幹)+という文型 (sentence pattern) の主語と述語をひっくりかえしたものである。すなわち、
N(名詞・母音語幹)+ ,,+.ここで、§14の説明をする。
の語尾が出そろったことになる。
V−
C−V−
C−
,,+ N(名詞・子音語幹)+§13で 「N1 は N2 である」 にあたる文型はおわったことになる。
注記: . を日本語話者は大抵 「ソヌン・イゴシダ」 式に発音する.ということは 「ヌン」 の末尾が 終声のように朝鮮人には聞こえてしまう.これを避けるためには いっそのこと この文の二つの分かち書き単位を続けて発音する,すなわちあたかも 「ソヌニゴシダ」 [sonniida] のように発音した方がよい.朝鮮語は一般に 二つの単語,二つの分かち書き単位の間でも 終声と母音とが繋がって発音される場合が多い.このような現象を 「リエーゾン」 と呼ぶ人がいるが,それは間違いである.
§14. | 上記 §13 ii) 参照。 |
注記: 例えば <牛は> と <手は> の発音は全く同じである.[sonn] ソヌン.両者は同音異義形である.両者は音素はまったく同じ (従って音声も同じ) だが,形態素の構成が異なり,それが正書法に反映されている.練習2
音素交替の日本語における例:
/f/ 〜 /v/ : knife [naif] 〜 knives [naivz] /d/ 〜 /t/ : lived [livd] 〜 looked [lukt] /u:/ 〜 /i:/ : tooth [tu:] 〜 teeth [ti:] etc. etc.
音素交替は1年生には教える必要はないが、教師は理解しておかなければならない。
/m/ 〜 /N/ : /'yomu/ 〜 /'yoNda/ /r/ 〜 /Q/ : /toru/ 〜 /toQta/ /t/ 〜 /d/ : /kaita/ 〜 /'yoNda/ etc. etc.
のように。
[ga], [gi], [gu], [ge], [go] [a], [i], [u], [e], [o]
(注*) 日本語の [g] と [] は、異なる音素に属すると主張する人もいる (服部四郎氏ら)§15は厳密にいえば、正書法の規則といえるものは、,, における、/d/ 〜 /s/ だけである。§15では /d/ 〜 /s/ だけが 形態音素論的交替を成す。現代朝鮮語には交替を起こさない /d/ を終声として持つ名詞は 1語も存在しない。
十五 /zyuugo/ 十五夜 /zyuuo'ya/ 銃後 /zyuuo/
注記: 韓国人の意識では // は常に終声である.しかし日本人には [] は初声のように発音させて構わない.ただし母音と [] との間を切って発音してはならない.
[mh], [nh], [h], [rh] などの発音は日本人教師にはむずかしいから、この部分は簡単にすませ、朝鮮人教師に発音をまかせる。なお、, などは、なれるまでは [ta:m-hwa],[t:n-hwa] などのように発音することとし、ただ [ta:-mhwa],[t:-nhwa] などのような発音もあることを知らせるにとどめるだけでよい。
(1) ↓
このように ↓ の方向にかわったとすれば、次のものも同じように考えればよい。 の場合は は落ちるのが普通だ。同様に 口音+ は (4) のように激音となる。 [] ↓ [] (2) ↓ (3) ↓ (4) ↓ [] [] ↓ [] ↓ [] []
【S.E.Martinの音素分析は、この点で首肯しうるものがある。】
/tamhwa/ /iphak/
注記: [mh], [nh], [h], [rh] は難しいので全く教えなくてもい.練習4 以外はすべて漢字語。
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【 英語における同化の例:(1) の単語は , を除き、すべて漢字語。日本語における同化の例:
/z/ → /s/ dishes [diiz], goods [gudz], books [buks] /d/ → /t/ loved [lvd], looked [lukt] etc. 同化の結果として、音素交替が起きる。この 『手引』 §15最後から2段目 を参照。ただし音素交替は同化によるものだけではない。
/t/ → /d/ /mita/ <見た>, /'yoNda/ <読んだ> /k/ → /g/ /nikai/ <二階>, /saNgai/ <三階> etc.
一年生には同化は教えなくてもよい。】
注記: これは確かに長い [s] なのだが,わたくしは今これを [ss] と記して の前の が [s] になったと見たい.『朝鮮語を学ぼう』,三修社,東京,1987ではそのように書いた.従って [ ] の中のハングル表記で この場合の 終声は 終声のように記してもよいはずである. と の発音表記をそれぞれ次のように修正し得る.- の は と発音されるとだけ述べ、その理由はあとに述べると簡単にすます。
[] → [], [tas:mnida] → [tassmnida] [] → [], [u:s:mnida] → [u:ssmnida]
注記: この部分は全く教えなくて構わない.本書では 「ゆっくりした発音」 と 「速い発音」 とを発音のスタイルとして区別する.初学者には前者から教えたらよい.練習5 ・・・以降はすべて固有語。それ以外は漢字語。
§19と関連する 文法事項は、§20と§21。
指示形容詞 文型 N(/,) A (Aは形容詞)
i) . ii) . と の関係。 は形容詞。 iii) . §17によって、- は [-]。 . と の関係。 語尾 - は、[-do] と [-to] とがありうるが、それは直前の音が有声音 (母音,-,-,-,-) か 無声音 (-,-,-) であるかによってきまる。すなわち、[-do] 〜 [-to] という交替を 朝鮮語の正書法では - と書くことにしているわけである。
このように、朝鮮語の正書法では同一形態素はできるだけ同じ形で表記することを原則としている (形態音素論の正書法)。このことは朝鮮人にとっては表記上のむずかしさをひきおこし、外国人にとっては読み方のむずかしさをひきおこすが、朝鮮語自体の 形態音素論的複雑さのあらわれであるから、やむをえない。このような原則を持つ正書法としてはロシア語のそれがある。§20を示しつつ説明する。iv) . と の関係。 . , の の発音は§20参照。 . . §17によって - は [-] と発音される。 . . §17によって の は [-] と発音される。 は早口な発音では [tdip] となりうることも教える。
,, に関し、§21を説明する。
「 語幹」はまだ字母の名称を教えていないから、この段階では [エル (l, ) 語幹] と言っておく。
【子音語幹の例として、 (無声音) を末音とする語幹 を挙げておいたが、実は末音が有声子音 (,) であっても、常に語尾 - は [-] と発音されるから (§29参照)、ここでは - [ta] と記した。】
§20. | 上記§19 iii) 参照。 |
§21. | 上記§19 iv) 参照。 |
は次のように理解すればよい。
口音+鼻音
↓
鼻音漢字語: ,, 練習7 , 以外はすべて漢字語。 (↓は変化の方向)
【 朝鮮語の同化は、2種類ある。 (←,→は影響を与える方向)
1) 順行同化 (progressive assimilation)
2) 逆行同化 (regressive assimilation)
A → B (§17)
】
A ← B (§22)
→ [] → []
練習8 全単語が漢字語
+ + 以外は漢字語 ↓ ↓ §23の同化以外はほとんど漢字語以外で起こる. (順行同化) (逆行同化) (↓は変化の方向)
は上記以外の位置ではすべて // に変わる。
/母音/ +// // //
i) 語頭 → // (cf.§35) これはここで説明する必要なし。 ii) //,// 以外のすべての終声+ (§24) … すべて漢字語 ↓ 練習9 … すべて漢字語 //
(1) [] [] [] [] → // (2) [] [] 口音 → /鼻音/
注記: 韓国では も も発音は全く同じ (すなわち音素も音声も同じ).しかし現在 北朝鮮の正音法ではこれらの場合綴り の初声はいかなる変化も蒙らない (ただし の前の口音は鼻音に変わる).従って北朝鮮ではこの場合 逆行同化である.ここの4単語の北朝鮮の発音は次の通りである.[],[],[],[].
【 , のたぐいを朝鮮の言語学者は 相互同化 (reciprocal assimilation) によるものだという。しかし菅野は (1) の段階で順行同化がおこり (2) の段階で逆行同化がおこったと見て、相互同化を認めない。】
A →
←B 。
【 朝鮮語における子音の同化を整理すると次のようになる。§24は厳密には同化とはいえない。次のように、形態素の交替と見るべきである。(§35参照)
】
語中 語頭 北朝鮮正書法 漢字 /母音/, //, // の後 それ以外 音素 /ro/ /no/ /no/ 労 韓国正書法 音素 /ri/ /ni/ /i/ 理 韓国正書法 音素 /nj/ /j/ 女 韓国正書法
次の順序で教える。
発音 §17により、 が読める。 §22により、,, が読める。 文法 §26と§27と関連する。 文型 N1+/ N2+/(〜) V(現在形).
N1+/ N2
i) . 代名詞 - … を - 母音語幹現在形 (cf.§27) ii) . - 語幹現在形 (cf.§27) iii) . - … と iv) . - … だけ
注記 I: iii) と iv) の単語 は 1989年に標準語形が に変更された.
注記 II: <大根とさつまいもを> と <万年筆と鉛筆を> の発音を比較すると,日本人の耳には後者が前者よりも忙しく発音するように感ぜられる.逆に日本人の発音を韓国人が聞くと,前者よりも後者が不必要に間延びしたように感ぜられる.これは日本人が一般に朝鮮語の終声を日本語の促音 (ッ) や撥音 (ン) のように発音してしまうこと,つまり朝鮮語の1音節を日本語の2モーラ (1音節+促音や撥音の1モーラ) で発音するために,朝鮮語よりも長くなってしまうのである.これを避けるためには朝鮮語の1音節をすべて等しく手で拍子を取って発音してみるとよい.そうすれば母音終わりの開音節と子音終わりの閉音節とでは 同じ1拍では後者の方が前者よりせわしく感じられるであろうし,それでよいのである.
v) . …を …と V - - C - -
§26 −−, −−, ・・・, ・・・, の練習をする。 vi) . §22によって, を発音する。
§26 −−, −−, −− を練習する。(§17により 等々発音可能) vii) . . - 子音語幹現在形 (cf.§27)
(§17による発音)
§26. | 上記§25 v), vi) 参照。 |
【 音素表記すれば、次のような交替があることになる。練習10 §3〜§6 (母音語幹),§7 (子音語幹) の名詞に次の形式にならって、いろいろの語尾をつけさせる。(発音に特に注意させる)子音語幹の交替は次のごとくである。
/-/ 〜 /-/ (1つ) /-/ 〜 /-/ (有声音の後) 〜 /-/ (無声音の後) (3つ) /-/ (1つ)
(現行の正書法は母音の前の形を基本形として採用していることがわかる。)鼻音の前の鼻音は、本来の鼻音と口音から変わった鼻音のいずれかでありうるから、意義識別の機能を失う (すなわち 鼻音の前の鼻音は意義識別の機能が中和する (neutralize))。
正書法 (, )
母音の前子音の前 鼻音以外の子音の前 * (, ) 鼻音の前 () // // // // // // // ( * /#/の前、すなわち後になにも来ない場合を含む。) 現行の正書法 (形態音素的原則による) による表記法のみが (−, −, −) 意味の識別を可能にさせている。
, // は本来の この場合の //, //は <荷物> 〜 <家>, <夜> 〜 <飯> の区別ができない。 , // は から変わったもの // は本来の この場合の // は <部屋> 〜 <ひょうたん> の区別ができない。 // は から変わったもの
なお、これと似た表記を日本語に求めれば、次のものがある。】
ハナ + シル → ハナジル (鼻汁) ただし ジ も ヂ も同音。 ハナ + チ → ハナヂ (鼻血)
…だ …は …を …と …も …だけ soda sonn sorl sowa sodo soman momida momn moml momwa momdo momman marida marn marl malwa maldo malman tibida tibn tibl tipkwa tipto timman oida osn osl otkwa otto onman 異形態 ナシ ナシ ナシ 2つ 3つ
注記: 語尾 -da/-ida, -nn/-n, -rl/-l, -wa/-wa〜-kwa は 異なる音声,異なる語形(音素),異なる表記 語幹 mar-/mal-, tib-/tip, o-/os- は 異なる音声,同じ語形 (音素),同じ表記 語幹 tib-〜tip-/tim-,o-〜os-/ot-,語尾 -wa/-kwa, -do/-to は 異なる音声,異なる語形 (音素),同じ表記
§27. 動詞の現在形 | 上記§25 i), vii) 参照 |
【 動詞語幹は次のような交替を持つ。練習11
基本形 現在形 母音語幹 /−/ 語幹 /−/ /−/ 子音語幹 /−/ /−/ 交替せず (1) あり / なし の交替 (2) 口音 / 鼻音 の交替 (§22参照)
(1) は歴史的に形成した交替である (一定の条件のもとに // が消滅したが、さりとて現代語では一定の条件を設定しえない) が、(2) は現代朝鮮語のあらゆる場合に通用する音素交替の規則に従って生じた語形の交替である。(1) は死んだ交替、(2) は生きた交替である。現代語の正書法では (1) のような場合は音素どおりに表記し、(2) のような場合は基本的と考えられる語形の表記を常に保つ (すなわち とは書かずに − とだけ書いて、/−/ あるいは /−/ と読ませる)。
を語幹末音とする用言はすべてこのパターンに属するから、わざわざ変格と呼ぶ必要はない。(河野六郎博士の命名をそのまま採用する。) 多くの場合、 語幹は母音語幹と似ているが、部分的に異なる様相を呈するので、母音語幹とは区別することにする。】
語幹 は普通南北朝鮮で 変格 と呼ばれるが、
母音語幹 : , 語幹 : (〜), (〜) 子音語幹 : (〜), (〜), (〜), * (〜) * この段階ではまだ終声字 を書く理由を教えることができない。
§28. +子音 |
§29. 用言語尾の頭音の発音 |
【§28ではじめて2つの終声字があらわれる ( , )。,, の3つの終声字は、用言にのみあらわれるという点だけでなく、§30にあらわれる新しい終声字が、いわば 母音の前で完全に読まれうる ものであるのに対し、子音字の前で 完全に読まれうるものであるという点で、特殊なものである。もう一つ、,, における は、次の子音 (平音) を激音にかえるという機能を持つだけであって、それ自体 実体を持たない。注*§15〜§29で基本的な正書法の規則は終わったことになる。
§29の場合は //、// を語幹末音とする用言の次に来る語尾・接尾辞の頭音 (平音) が濃音化するのであるから、§28の場合の平音を激音化させる要素 [h] に似て、平音を濃音化させる要素 [] とでもいったものを認めてもよいという議論もありうる。すなわち、 [],…, [] ・・・ のように。しかしながら、, とは異なる , という語幹末子音 (語尾・接尾辞の頭音 (平音) を濃音化させない) は朝鮮語には存在しないから、敢て記号 を導入しなくても、混同は避けうる。なお、 // を語幹末音とする子音語幹用言は1語も存在しない。従って 初学者には 子音語幹の後の平音は濃音となるというふうに教えたほうが楽である。( ・・・ の例はそのためにつけたものである )注* の は実体がないと言いきってよいか疑問が残る。次のとおりである可能性がある。§28,§29の終声を§30の終声等と比較すると次のようになる。は [] という発音がありうるし、 の [] の [] の終声の [] は [] が同化したものと考えると、実体があるように見える。
[] [] [] [] [] [] -,- の頭音が濃音化するのは、3,9,10の場合、§17の原則による。3,9,10に - がつくと、それらの末尾は§22の原則によって鼻音化する。3と9の語幹末子音がもっとも完全にあらわれるのは、-/-+ の場合、すなわち母音の前であるので、ここで終声字 と とが区別される。10は // のみが不規則な形であり、すなわち、ここでは // 〜 // という交替 (死んだ交替) があるので、このタイプの用言は変格用言といわれ、音素表記される (この限りでは 語幹も 変格といいうるが、これは少し状況が異なる)。
- - -/-+ - 1. - // // // // 2. - // // // // 3. - // // // // 4. - (1) // // // // (2) // // 5. - // // // // 6. - // // // // 7. - // // // // 8. - // // // // 9. - // // // // 10. - // // // // (cf.§93)
5,6,7,8は、-/-+,- 形を見るかぎり、各々 //,//,//,// という終声である可能性があるが、-,- 形を見るに及んで、どうしても //,// というものを想定したくなる。すなわち終声には、母音の前で機能するものと、子音の前で機能するものとがあり、5,6,7,8はそれらが結合したものだといいうる。4は (2) のように考えた場合、10 とよく似ており、ちがいは 10 に の要素が複合したにすぎない。
すなわち次のようになる。
3は正格、4,5は変格的、6と9は と との違いのみ。
正書法 - - -/-+ - 1.- /-/ /-/ 2.- /-/ /-/ /-/ 3.- /-/ /-/ 4.- /-/ /-/ /-/ 5.- /-/ /-/ /-/ 6.- /-/ /-/ 7.- /-/ /-/ 8.- /-/ /-/ 9.- /-/ /-/ , はそれ自体実体を持たない。
は次の平音を激音化する (ただし //は // となす)。
は次の平音を濃音化する。
】
注記: 次のものを変更: [] → [], [] → []
初声 終声 平音 濃音 激音 唇音 p 歯音 t ― 軟口蓋音 k (1) (上の [1] と [2] を参照) 終声 終声字 [] 印は既出 [] []
(2) (上の [3] を参照) 印は既出, _ 印は前の子音字を落すもの
[] [] [] [] [] [] []
【 [1] は 一語では [] と読まれ、その他の形容詞および数詞 では [] と読まれるものとする。ただし北朝鮮では だけでなく、形容詞もすべて [] と読まれるらしい。ソウルの人でも を [] と発音する人が特に若い世代に多い。しかし他の形容詞にひかれたものらしい。ii) 〜 は簡単に教える。
[2] に関しては p.281の §30を参照せよ。
[3] ,,, に関しては、この 『手引き』 の上の表と似たものを以下に示す。( の要素が複合したものと見なされうる)
《下の表の凡例》
* - はつきえず、- がつきうる。 ** // を語幹末音とする用言のうち 語幹のみがそれにつきうる語尾・接尾辞の頭音が平音のままである。 *** voice 接尾辞 -- の前では が添付されないことがある。
-,-,-】
正書法 - - - -/-+ -*** /-/ /-/ -*** /-/ /-/ /-/ -*** /-/ /-/ - /-/ /-/ /-/ - /-/ /-/ - /-/ /-/ /-/ - /-/ /-/* /-/ - /-/ /-/ cf. - /-/** /-/ /-/
注記: ただし 1989年の韓国の正書法の改正により この点では韓国が北朝鮮に歩み寄った勘定で,完全に南北同形となった.したがって ―― 欄にはそれぞれ 形, 形 を補わなければならない.iii) 簡単に教える。
すなわち、2つの終声字は、最初のものは終声のまま、第2字を初声とする。
↓ [] [] [] (cf.§17)
vi) は学生におぼえさす必要はまるでない。こういうものだといえばよい。
[] [] [] []
iv) と v) のあるものは 「ゆっくりした発音」と 「速い発音」 の違いのあるものがある.注記: 『朝鮮語を学ぼう 』,三修社,東京,1987ではこの場合も「ゆっくりした発音」を採用した.
ゆっくりした発音 [] [] [] [] [] [] [] 速 い 発 音 [] [] [] [] [] [] []
-, | -, | -, | -, | - |
発音 | §30; 最後の文の中の のみ§33参照。 | ||
---|---|---|---|
文法 | §32, §34 | ||
文型 | ,,+ N1+/ (-,-,-/-) . | ||
N1+/ N2+/ . |
. 指示代名詞 . . . -/- §32参照 . - 〃 . (*) , 存在詞 §34参照 . . .(*) (*) §30 iii) 参照 . − . §32参照 - の否定形 . . [] §33
【 印の左右にある単語は、北朝鮮の正書法で分かち書きされない (韓国では分かち書きされるのが原則だが、個人差が多い)。
はじめのうちは学生たちには も も くっつけて読めという記号だという程度にいっておく (p.283,§31参照)。 は [k:nn] という発音も可能。】
注記: 次のものは子音と母音とをくっ付けて発音した方が朝鮮語らしくなる.
[janpta] ヤノプタ; [kmanitta] ケマニッタ; [thrinnda] チェグリンヌンダ
§32. | §31参照。 |
[1] §7の単語および次の単語に -,-,- をつける。
, , , , , , , , , , ,
[2] §3〜§6の単語に -,-,- をつける。
§33. | §31参照。簡単にすます。 |
§34. | §31参照。 |
(空間) (目的) (期間)
§35. | この手引きの§24の下の表を参照のこと。 |
【 歴史的には次の経過をたどったと思われる。§35は次の順序で教えるとよい。
[1] 語頭での の全面的な // 化
[2] 語頭での +/i/ あるいは /j/ の場合の // の消滅 】
【 さらに南北の表記と発音の変遷を見ると次のとおりである。また、1966年の北朝鮮の正音法 (orthoepy) によれば、次の場合も南北で発音が異なることになる。
正書法 発音 正書法 発音 正書法 発音 南 北 南 北 南 北 南 北 南 北 南 北 1945 1948 1966
しかしながら、事実上この場合 [] ではなしに [] と発音されていると思われる。
§24 南 [] [] [] [] 北 [] [] [] []
,, の語頭の []、[] は、北朝鮮で若い世代によってよく発音されているようだが、旧世代は韓国と同じ発音をしているようである。
】
注記: あらゆる位置での ,語頭の を常に変化なしに文字の通りに読ませようとする北朝鮮の正音法は定着したようである.北朝鮮のラジオやテレビでの発音だけでなく一般人の発音でもそれが違和感なく受け入れられていることを認めざるを得ない.人工的な正音法が定着した数少ない例である.
i) 語頭の ni (nj) → /i/ (/j/) ii) 語頭の r → n (無条件に) そして ri → ni → /i/ rj → nj → /j/ rV (i以外の母音) → nV ( i 以外の母音) iii) ただし北朝鮮では、i),ii) の変化は一切ない (§35の単語のハングル表記の列の最左列のものが北朝鮮の綴りである)。
発音 | §38 (), §39 () | ||
---|---|---|---|
文法 | §37 | ||
文型 | N1 位置の名詞+ N2+/- . | ||
N1 . |
§37. | §36参照 | |
§38. | §36 参照。ひととおり読む程度にしてはやく終える。 |
ii) ただし§15の規則は単語内部で、しかも語幹+語尾 (or 接尾辞) (母音ではじまるもの) でのみ生じうる。それ以外は次のようになる。
cf. . . [ ] [ ]
iii) 漢字語において、+ は2通りの読み方がある。
母音の前
(語尾・接尾辞で)/#/の前 母音の前
(自立語で)*正書法 // // // // // // // // // //
*あるいは自立的形態素
iv) 簡単に述べる。
[1]
+ (§23参照) ( は漢字音、
は単語) ↓
[2]
+ + ↓
[1] と [2] とでゆれているものもある。(資本論)[] or [][2] は単語間でも生じうる。
cf. [ ]
【 [3] また §23の + も単語間で起こりうる。 ↓ cf. ? []
上記の [2] と [3] は §17、§22の原則とならんで文の中のどのような単位の間でも起こりうるものである。
】
注記: 朝鮮語の分かち書きのうち特に難しいのが漢字語のそれである.北朝鮮では漢字語の分かち書きの原則は何度も変更されてきた.韓国でもそれは教科書だけでなくジャーナリズムでは特に乱れている (紙面の節約だけのためにしばしば続け書きが多くなされる).1989年の韓国の正書法によれば 人名は姓と名を続け書きすることになっている.
§39.リエーゾン | (p.283.§39参照) |
すなわち は // 〜 // という交替形を持ち、後者は子音の後に現れることがわかる。
[] [] [] [] ( <[])
における vous〈you〉/vu/〜/vuz/ という交替形が、次に来る単語が子音で始まるか、母音で始まるかによって選択の条件が定まることとよく似ている。vous aimez のたぐいをフランス語でリエーゾンというので、これをまねて、上記の // の場合をリエーゾンと呼ぶことにする (朝鮮語とフランス語のリエーゾンのちがいは、完全な交替形が前者では第2要素にあらわれ、後者では第1要素にあらわれることである。しかも朝鮮語では不完全な形 () が基本形とされる)。
vous lisez vous aimez [vulize] [vuzme] 〈you read〉 〈you love〉
注記: 次のような現象はリエーゾンとは根本的に異なる.練習15 以外はすべて漢字語。
フランス語:il a [ila] <he has>; elle est [l] <she is>
朝 鮮 語: [] <家の前>; [] <水の上>
_ | ||||
発音 | §42 (’, | ) | ||
---|---|---|---|---|
§43 ( ’, ’ ) | ||||
文法 | §41 | |||
文形 | N1 N2 | (N1 のN2) |
注記: <もの,こと>は常に前に修飾語を必要とする名詞で,不完全名詞と呼ばれ,北朝鮮では前の単語に続け書きされる.
§41. | 特に 「誰々の何々」 という時の 「の」 は省略されることが多い。 |
§42. | 初学者には無理に … を短く発音させなくてもよろしい。 | |
注記: 初学者にはここは一切教えなくてよろしい. |
§43. | 語幹と語幹とをつなぐ機能を持つ [t] という要素は次のような交替を持つ。 (p.283. §43参照) |
学生には簡単に教える。本書で ’ をつけたところは次の平音を濃音化させるといった程度に理解させればよい。
//, //, //, // の次
口音の前母音の次 口音の前 鼻音の前 リエーゾンの前 // // 表
記南 北 1955 ’ ’ ’ ’ 1966
注記: v は現在韓国では と書かれる.練習16 ,,,, は漢字語だが、ほとんど固有語化している。
_ | .... | .... | ||||||||||||||||||
発音 | §42 | ( | , | ) | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
文法 | §45, §46, §47 | |||||||||||||||||||
文形 | 主語 対象語 (object) あるいは状況語 述語 |
. | 人間+ (§45) | ||||
. | → (§47) | ||||
. | + → (§47) | ||||
. | 人間+ (§45) | ||||
. | V− (§45) | ||||
. | |||||
. | − (§45) | ||||
− (§45) | |||||
. | R− (§45) | ||||
. | C− (§45) | ||||
. | 格語尾+副語尾 (§47) | ||||
〜 | 用言否定形 (§46) | ||||
(が動詞扱い) | |||||
. | − (§45) | ||||
. | 用言否定形 (§46) | ||||
[ | . 〜 . | ] | (が形容詞扱い) |
注記: [pusan] <釜山>.関東の発音では無声子音に鋏まれる半狭母音 i や u は無声化することが多い.この場合無声化しないように充分 u を響かせて発音することに留意する必要がある.
§45. | (cf.§44) | |
§46. | (cf.§44) 簡単にすます。 | |
§47. | (cf.§44) |
【 実は − ・・・から(時間) を含めるのを忘れた。本書の一大欠点である】日本語と共通している点はその事実だけを簡単に知らせる程度でよい。
§48. | i) は重要だが、今のところは簡単にふれる程度でよい。 | |
i)、ii) ともに ' 印の場合の発音に注意を向けさせる程度でよい。 |
【 ここまでの正書法の規則については本書の折り込み付録 「終声と初声の結合」 にまとめて記したので、今後随時それを参照させるとよい。】
§49. | 学生に読んでおくように指示するにとどめる。 |
注記: 本書で「漢字語」と呼ぶものは南北朝鮮の呼び方であり,日本では普通 「漢語」という.「漢語」は中国では漢族の言語を指し,日本で普通中国語と呼ぶものは正しくは 「漢語」と読んだ方がよいと思われるので,日本の 「漢語」の代わりに朝鮮の呼称を借用して 「漢字語」と呼ぼうとするものである.
§50. | 子音字の名称は実際には終声字を示す時ぐらいにしか使われない。 |
= (=終声) (p.283 §50参照)
§51. | 自分で読んで理解し、練習18 をやるように指示する。 | |
練習18は必ず学生たちに提出を求めて、添削する必要がある。 |
注記: ここの記述を全面的にこのホーム・ページ 『百孫朝鮮語学講義』 III. 資料編 「朝鮮語トレーニング」 238. に替えなさい.