三枝壽勝 / 朝鮮文学研究会 - 出版紹介


紹介: 『現代韓国短編選 上/下三枝壽勝 他訳、岩波書店

(・・・) 選び出した作品を並べてみると、かなり特色のある結果が出たという感じである。面白いのは、最後が、逃げたり走ったりで終るものがかなり含まれていることである。韓国の小説に、逃げたり走ったりする場面で終わるものが、特に多いわけではない。とするとこれは私たちの選び方に関係しているのだ。もしかすると、やけっぱちになって逃げたり、走ったりする場面に現代の韓国がよく象徴されているという、共通の先入観があったのかもしれない。そういえば、それぞれの巻のしんがりをつとめる、「深く青い夜」 と 「狐狩り」 でも、共にありそうでなさそうな目標をめざして走る場面が登場して、どこか意味ありげである。しかもその舞台が外国で、その一方がアメリカで、他方がロシアとなると、ますます意味ありげで、なにやら象徴的な意味があったのではないかとかんぐりたくもなってくる。だがこれらの結果は、まったく偶然である。、私たちが意識的にそうしようとしたわけではない。しかし、偶然にもせよこんな結果になったのはとても興味深いことではないかと思う。このアンソロジーは、このまま韓国で出版してもいいのではないかと思っている。(三枝、解説
岩波書店 『現代韓国短編選 (上・下)』 三枝壽勝 他訳
2002.4.26、ISBN4-00-022722-X C0097 (上巻)、¥2000+税
2002.4.26、ISBN4-00-022723-8 C0097 (下巻)、¥2000+税

目次

上巻
作者 作品 作品初出 訳文
シン・キョンスク よりそう灯り 1993 (岸井紀子訳)
コン・ソノク かあちゃんはシングルマザー 1999 (岸井紀子訳)
ハ・ソンナン かびの花 1998 (山田佳子訳)
ウン・ヒギョン 妻の箱 1997 (水野 健訳)
キム・チョングァン 警察署よ、さようなら 1999 (岸井紀子訳)
キム・ヨンハ 非常口 1998 (三枝壽勝訳)
ユン・フミョン 狐狩り 1993 (三枝壽勝訳)




下巻
イム・チョルウ 父の地 1984 (筒井真樹子訳)
イ・チャンドン 焼紙 1985 (筒井真樹子訳)
パク・サンウ シャガールの村に降る雪 1990 (水野 健訳)
ヤン・クィジャ 雨降る日にはカリボンドンに行かねばならない 1986 (藤石貴代訳)
パク・ワンソ 母さんの杭 1981 (山田佳子訳)
チェ・イノ 深く青い夜 1982 (水野 健訳)

解説 三枝壽勝