資料27
■『林巨正』の内容と主な登場人物

1.鳳丹篇

 林巨正が生まれるまでの話、燕山君時代。李長坤は巨済島に流配されていたが、さらに禍が及ぶのを恐れて逃亡し、咸興の白丁(ペクチョン)の家にかくまわれ、そこの娘・鳳丹をめとる。燕山君が廃位後地位を回復する。上京する時、鳳丹についてきたヤン・ジュパルは妙香山で道人に会い、修行したのちソウルで有識なカッパチ白丁として暮らす。鳳丹の外伯父・イム・ドリも揚州の白丁に婿入りする。

2.皮匠篇

 ヤン・ジュパルはソウルで両班たちと交流する。その息子がイム・ドリの娘・ソプソビと結婚することになり、ソプソビの弟・コクチョンも上京し、同じ村のイ・ボンハク、パク・ユボクと共にカッパチに教えを受け、義兄弟を契る。

3.両班篇

 中宗より仁宗、明宗時代の両班の政争。コクチョンは乙卯倭変(1555)にイ・ボンハクと共に出兵しようとするが、白丁の身分のため拒絶され、単身参戦する。白丁に対する差別、国政の腐敗に憤る。

4.義兄弟篇
 将来イム・コクチョンのもとに集まる頭領たちが、盗賊になるまでのいきさつ。

〈主な登場人物とあらすじ〉
1 パク・ユボク:無実で死んだ父親の仇を殺し官家に追われる途中、崔瑩堂の巫女に選ばれた崔家の娘と出会い、共に逃げ、盗賊・呉哥の養子となる。
2 クァク・オジュ:青石谷(チョンソクコル)近くの村に住む強力の下人だったが、盗賊・呉哥をやり込めた仕返しにやってきたパク・ユボクと渡り合い、意気投合してしまう。妻が出産後死んで貰い乳をしていたが、むずかる赤子を衝動的に殺してから、子供の泣き声を聞くと狂気にかられ子供を殺すようになり、逃げて青石谷に合流する。
3 キル・マクポンイ:塩売り。次兄を不具にした仕返しにクァク・オジュを官家へ突き出そうとするが、イム・コクチョンのとりなしで和解。結婚してから義母の仕打ちに堪えられず青石谷に入る。
4 ファン・チョンドンイ:イム・コクチョンが白頭山で出会って結婚した野生育ちの女ウンチョンイの弟。飛ぶように歩くことと将棋を指すことが特技。将棋の名手の出す難題を解いてその名手の娘と結婚し、鳳山で将校となる。
5 ペドルソギ:石投げで虎を殺した手柄で駅卒となる。不義の妻を殺し捕まるが、ファン・チョンドンイのところにやって来ていたパク・ユボクに救われ、青石谷に逃げる。代わりにファン・チョンドンイは済州島に流配される。
6 イ・ボンハク:倭変で手柄をたてたあと済州島で県監となり、全州妓生・桂香と暮らしていた。その後転任してソウルにいたが、政争に巻き込まれ左遷される。
7 徐霖(ソ・リム):下級官吏出身、中央に進物する品物を横領したのが発覚し逃げる途中で青石谷の盗賊に出会い、貢ぎ物のありかを教え、その功で青石谷に入る。
8 結義:楊州のイム・コクチョンの家に奪った貢ぎ物があるのが発覚し、家族が捕まる。青石谷の頭目たちが家族を救ったあと、義兄弟の儀式を行う。
5.火賊篇(未完)

 イム・コクチョン一味が官軍と戦い、追い詰められてゆく。 

〈主なあらすじ〉
1 青石谷:イム・コクチョンは奪った財物を処分するためソウルに上り、韓温の家に泊まり両班として振る舞い、3人の妾を従えて妓生通いをするが、妻子たちが押し寄せ、騒動のあと山に戻る。
2 松岳山:青石谷の一行が松岳山に紅葉見物に行った時、ファン・チョンドンイの妻が誘拐され、取り戻す際に殺人を犯してしまう。官軍に追われるのをイム・コクチョンが救う。
3 巣窟:イム・コクチョンの一味は官の役人を装って襲撃を繰り返す。ソウルにいる妾は捕まり官婢とされるが、妓生・素紅だけは青石谷に連れて来る。
4 :宗室の庶子・端川令が青石谷の賊に捕まるが、みごとな笛の演奏で感動させ釈放される。
5 平山の戦い:新任の鳳山群守を殺そうとするが、ソウルで逮捕された徐霖が命惜しさにこの計画を暴露する。官軍の襲撃を受けるが、無事青石谷に戻る。
6 九月山城 [元題:慈母山城] :官軍の攻撃を受け守勢に立ったイム・コクチョンたちの話。