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ああ、光州よ無等山よ / 死と死の間で / 血の涙を流す / 我等の永遠なる青春の都市よ // 我等の父はどこに行ったのか / 我等の母はどこで倒れているのか / 我等の息子は / どこで死にどこに埋められたのか // 我等の可愛い娘は / またどこで口を開けたたまま横たわっているのか // 我等の魂はまたどこで / 裂かれ散り散りにかけらとなったのかというふうに始まります。そして、夫のことが気づかわれ家から出て犠牲になり死んだ妻の語りを途中に入れています。
私はあなたによくしてあげたかったのです / ああ、あなた! / ところで私はあなたの子供を孕んだ身で / どうして死んだのですか。あなた! / すいません、あなた! / 私から私の命を奪ってゆき / 私はまたあなたの全部を / あなたの若さあなたの愛 / あなたの息子あなたの / ああ、あなた! 私がけっきょく / あなたを殺したのですか自分の肉親というものを素材にしながら訴える力を増す時の詩の書き方です。既に見た林和の詩と共通する傾向がここにも出ていると思います。
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イ・チャンドン(1954〜 ) 出典:イ・チャンドン 『韓国小説文学大系 86』 東亜出版、1995 |
金源一(キム・ウォニル/1942〜) 出典: 『作家世界 9号』 図書出版世界社、1991(夏号) |
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梁貴子(ヤン・グィジャ/1955〜 ) 出典:金治洙ほか編 『我らの時代 我らの作家 26』 東亜出版社、1987 |
ト・ジョンファン(1954〜 ) 出典:ト・ジョンファン 『花葵のあなた』実践文学社、1986 |
ソ・ジョンユン(1957〜 ) 出典:ソ・ジョンユン 『ひとり立ち』 チョンハ、1987 |
待つことは / 会うことを目的としなくても / よい。/ 胸が痛ければ / 痛いままに、/ 風が吹けば/ うなじを高く挙げながら、なびかせる / かすかな微笑 // どこかにいるはずの / 私の片割れのために / さまよっていた多くの放浪の日々。/ 生まれてからすでに / 誰かが定まっていたとすれば、/ いまではその人に / 会いたい。というふうに始まるのですが、確かに青春時代の若者の気持ちに即した歌い方をしています。文学に関心のある人たちは、ベストセラーになったこの2つの詩集をどうも馬鹿にしていて、特にこの 「ひとり立ち」に対しては、あんなものは詩ではないと言って見ようともしませんでした。確かに詩として優れていないかもしれませんが、非常に面白い特色がいくつかあるという気がします。
微笑をたたえ / 諦めるほかは…… / あぶなっかしく掴んでいるものどもが / 千々に壊れてしまったある日、私は / 寂しい後ろ姿を見せて / 戻っていった。とあるのです。「寂しい後ろ姿を」 という台詞は、尹東柱の有名な詩 「懺悔録」を思い起こさせます。また 「千々に壊れてしまった」 というのには、金素月の 「招魂」の中の「千々に砕けてしまった名よ!」というフレーズが透けて見えます。それから4連の
誰かが / 私に向かって近づいてくると / 私はぎくりと後ろにあとずさりする。/ そうしてその人が / 私から遠ざかっていく時には / 足をどんどん踏み鳴らして手招きする。// 会う時にすでに / 分かれる準備をする私達は、/と続いていくところは、韓龍雲の 「あなたの沈黙」 という詩を連想させますし、他にも多分私が知らないものも入っているのではないかと思うのです。ですから、この詩集が若者に受けたそのポイントは、自分たちに馴染みのある言葉があちこちにちりばめられていたからではないかとも思われるのです。
資料36 (拡大: 別窓に表示 157KB) |
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コン・ジヨン(1963〜 ) 出典:コン・ジヨン 『さば』 ウンジン出版、1994 |
シン・ギョンスク(1963〜 ) 出典:シン・ギョンスク 『オルガンのある場所』 文学と知性社、1993 |